[酒提供店対策] 強圧的手段が目に余る
( 7/15 付 )

 政府が新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、酒類提供を続ける飲食店対策として打ち出した方針が相次いで撤回に追い込まれた。
 政府は酒類販売事業者に、要請に応じない飲食店との取引停止を求め、取引金融機関には順守を働き掛けてもらう方針を明らかにした。だが、業界や与野党から厳しい批判が噴出した。
 撤回は当然としても、強圧的な姿勢を続ける限り人心は離れていく。菅政権はコロナ対策の実効性を高めるには国民の理解と協力が欠かせないことを自覚すべきである。
 東京都には12日、4度目の緊急事態宣言が発令された。菅政権は感染拡大が止まらない要因の一つは飲食店での酒類の提供だと判断。酒類を提供する飲食店には休業が要請されたが、従わない飲食店も出ている。
 これまでも休業や営業時間短縮、酒類の提供停止を要請したものの、効果が十分上がっているとは言い難い。感染を抑える対策が手詰まりとなった政府は業を煮やしたのだろう。
 西村康稔経済再生担当相は8日、飲食店対策を明らかにした。真面目に取り組んでいる事業者との「不公平感の解消」が目的だと説明したが、金融機関からの働き掛けは、資金繰りに苦しむ飲食店への圧力に他ならない。
 金融機関や酒類販売事業者への依頼は、特措法に基づく基本的対処方針には明記されていない。要請であっても憲法が保障する「営業の自由」を妨げることにもなりかねない。
 要請に応じた飲食店には協力金が支払われる。だが店を続けるには不十分だったり自治体の手続きが滞って支給が遅れたりするケースもある。飲食店への手厚い支援こそ急ぐべきである。
 メディアが飲食店を扱う際、店の順守状況に「留意」を求める方針は示されたままだ。酒を提供する店を取り上げないよう促す内容にも受け取れるが、政治が介入するのは許されない。
 今回の政府方針は事前に菅義偉首相と関係閣僚による会合で事務方が説明し、西村氏は「私の責任で決定した」とする。閣内で十分な議論のないまま決まったとしたら、菅政権の責任が当然問われるべきだろう。
 政府への不信感はワクチンの供給不足でも高まっている。接種に必要な量が届かず、多くの自治体で予約受け付けを停止するなど混乱が続く。
 長引くコロナ禍の影響で解雇や雇い止めで仕事を失った人は見込みを含めて約11万人に上り、業績が極度に悪化した企業も少なくない。
 菅政権には今の国民の暮らしが見えているのか。迷走するコロナ対策を猛省するとともに、野党が求める臨時国会召集に応じて議論すべきである。