[最低賃金上げ] 雇用守る支援強化を
( 7/16 付 )

 厚生労働相の諮問機関、中央最低賃金審議会の小委員会は、本年度の地域別最低賃金改定で、都道府県の時給を一律28円引き上げて全国平均で930円とする目安をまとめた。
 新型コロナウイルス禍で雇用維持を理由に事実上据え置いた昨年度から一転し、過去最高の大幅な引き上げとなった。低賃金で働く非正規労働者の処遇改善へ一歩前進したといえる。
 一方で、人件費増がコロナ禍で苦境にある企業をさらに追い詰め、解雇が相次ぐ事態を招いてはならない。政府は雇用の維持を後押しする支援を強める必要がある。
 最低賃金は全ての労働者に適用される時給の下限額だ。目安を踏まえて各地の地方審議会が都道府県ごとに改定額を8月ごろにまとめ、10月ごろに順次適用される。
 安倍前政権は2016年度から4年連続で年率3%超の引き上げを実現したが、昨年度は目安額が提示されず全国平均で前年度比1円増にとどまった。今回は菅政権が上げ幅をコロナ前の水準である24~27円まで引き上げられるかが焦点だった。
 昨年9月の就任直後から引き上げに意欲を示していた菅義偉首相は、経済財政諮問会議でも繰り返し言及。事実上政権主導の引き上げといえ、秋までに行われる衆院選で成果に掲げたい思惑がうかがえる。
 コロナ禍も相まって非正規労働者は厳しい生活を強いられ、「貯金もできない」という声が上がる。小委員会でも労働者側は「現在の額では最低限の暮らしもできない」と主張を繰り広げた。
 ただ、労働者側には職を失うかもしれないという不安もある。コロナ禍で企業は宿泊業や飲食サービス業を中心に大きな打撃を受けており、最低賃金引き上げが経営をさらに圧迫しかねないからだ。
 政府は中小企業向けに、時給が最も低い労働者の賃金を一定程度上げるなどした企業に支給し生産性向上を支援する業務改善助成金の拡充などに乗り出す方針だ。現場の実態を踏まえ、より使い勝手の良い制度にすることが不可欠だ。
 目安通りにいけば、最高額は東京都の1041円で、鹿児島県は821円、最低額は秋田など7県の820円となる。最高と最低の差221円は変わらない。都市部への労働力の集中を解消し地方を維持するため、地域間格差の是正も急がれる。