[75歳医療費] 制度持続へ改革さらに
( 7/17 付 )

 医療制度改革関連法が成立し、一定の収入がある75歳以上の医療費窓口負担が2022年度後半、1割から2割に引き上げられる。
 少子高齢化が進む中、社会保障制度を維持するために高齢者への手厚い給付を見直し、現役世代の保険料負担の軽減を図る狙いだ。
 しかし、年間40兆円を超える国民全体の医療費から考えると、効果は限定的だ。政権内部にも認める声があるように、今回のような弥縫(びほう)策で将来にわたり制度を持続させていくのは困難だろう。政府は抜本的な改革を加速させなければならない。
 75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の窓口負担は現在原則1割で、現役並みの所得(年収383万円以上)がある人は3割を負担している。
 関連法は2割枠を新設する。年収200万円以上の単身者と合計年収320万円以上の夫婦世帯の約370万人が対象となる。
 後期高齢者医療制度の財源は、窓口負担分を除くと高齢者が納める保険料が1割、公費が5割、残る4割を現役世代の保険料で賄う。その医療費の総額は21年度に予算ベースで18兆円に上り、うち現役世代が6兆8000億円を負担する見込みだ。
 厚生労働省によると、現役世代の負担は人口の多い団塊世代が75歳以上になり始める22年度に7兆1000億円、団塊世代全員が75歳以上になる25年度には8兆1000億円になるとみられ、膨らむ一方だ。
 2割枠を設けても現役世代の負担は年間720億円程度抑えられるだけで、1人当たりでは月額約30円にすぎない。世代間の給付と負担の不均衡は是正されず、政府が目指す「全世代型社会保障」の実現は遠い。
 高齢者からは負担増への不安や「生活費を切り詰めなければ」といった切実な声が上がっている。
 引き上げ後3年間は外来受診に限り、窓口負担の増加額を月最大3000円に抑える激変緩和措置がある。しかし、厚労省の試算では、こうした措置があっても窓口負担の年間平均額は2万6000円増え、10万9000円になる。
 経済的な理由で受診を控え病状が悪化する人が出ることも懸念される。政府は医療機関と連携し目配りを強めてもらいたい。
 関連法の付則には、公布後速やかに社会保障制度の改革と少子化に対処する施策の総合的検討に着手することが盛り込まれている。
 国会審議で野党の一部が主張した所得の高い高齢者の保険料上限引き上げも検討すべきだろう。政府も今後の検討課題と認めており、能力に応じた負担という観点では理にかなっている。
 政府、与野党は安定的な財源確保に向け、さらに議論を深めるべきである。