[コロナ下の五輪] 安全守る対策 総点検を
( 7/20 付 )

 東京五輪の開催が迫り選手団の来日がピークを迎える中、首都圏で新型コロナウイルスの感染が再拡大している。選手をはじめ、大会関係者の感染確認も相次いでいる。
 菅義偉首相はコロナ下で開催する東京五輪の意義について「世界が一つになり、難局を乗り越えていけることを発信したい」と繰り返す。
 だが、今の状況で国民の「安全」を守れるのか、はなはだ心もとない。政府は危機感を強く持って対策を総点検しなければならない。
 東京は4度目の緊急事態宣言が発令中だが、感染者は1000人を超える日が多く、その効果は表れていない。
 専門家は現在のペースで推移した場合、直近7日間を平均した1日当たりの新規感染者が五輪閉会後には2400人程度に上ると試算。これまで最多だった年末年始の「第3波」を超える水準に相当する。
 こうした状況の中、23日に開幕する大会には選手約1万人と国際オリンピック委員会や報道など約4万1000人の関係者が来日する。
 運営には選手らと外部の接触を遮断するバブル方式を用いる。菅首相は選手らの多くがワクチン接種を済ませ、厳格な検査と行動制限を課してウイルスの国内流入を防ぐと強調する。
 確かに選手らの8割以上が接種後に来日するとみられ、陰性証明書が必要となる。空港到着後は唾液の検査で陰性が確認された時点で選手村や事前合宿先に向かう手はずになっている。
 しかし、選手と外部の接触を完全に遮断するのが難しい場所もある。例えば空港では、専用レーンを外れて移動したり、検査結果を待つ間に動き回ったりする人もいるという。水際で食い止めるのは限界があるのではないか。
 事前合宿先で感染が判明する例が相次ぎ、鹿児島市では男子7人制ラグビー南アフリカ代表のスタッフの陽性が確認された。東京・晴海の選手村でも同国のサッカー男子選手らの陽性が確認された。選手村ではクラスター(感染者集団)発生の恐れがつきまとう。
 行動制限の順守を求めるのはもちろんだが、検査の徹底が欠かせない。政府は五輪を発生源とするクラスターが確認された場合、大会を続行するかどうか検討しておくべきだろう。
 多くの競技会場が無観客とはいえ、関係者が多数活動する。感染力の強いデルタ株への置き換わりも進む中、夏休みやお盆と重なり人の流れが増えるとさらなる感染拡大が懸念される。
 コロナ収束の鍵を握るとされるワクチンは、供給不足や運用の不備で接種のペースが落ちている。
 菅首相に求められるのは、五輪を予定通り終わらせることではなく、国民の安全を最優先し、コロナを一日も早く収束させる手を打つことである。