[塩田県政1年] 発信力もっと高めねば
( 8/1 付 )

 鹿児島県知事に塩田康一氏が就任して1年が過ぎた。新型コロナウイルス下での就任であったが、行政経験が長い元経済産業官僚らしく、そつなく県政を運営しているように映る。
 だが、県民の関心が高い重要課題について自身の意思を明らかにしない姿勢が目立ち、不満や不信の声が上がっている。
 トップの発信力が十分でなければ、県政に対する県民の関心は薄れ、課題解決に不可欠な理解と協力は得られまい。もっと率直に考えを語り、リーダーシップを発揮してもらいたい。
 知事は昨年7月、「県民の声が反映される県政」などを訴え、現職、元職を含む戦後最多の7人による選挙戦を制して初当選した。
 就任からこれまでに9市町で「ふれあい対話」を実施した。参加者が団体トップ中心だった前知事時代と違い、公募枠を設けて幅広い層の意見を直接聞く機会を設けた点は評価できる。
 ともに県政を進める県職員との関係を重視し、施策などは大まかな方向性を示した後、議論を重ねて職員自身に考えさせるという。こうした手法はアイデアが出やすく、人材育成にもつながると好評だ。
 コロナ対策では状況が目まぐるしく変化する中、感染予防と経済活動の両立に向けた苦心の跡がうかがえる。
 今年5月には2回目の感染拡大警報を発令し、鹿児島市などを皮切りに飲食店を現地調査するローラー作戦を展開。飲食店の感染対策の実効性を第三者が審査、認証する制度も創設した。
 ワクチン接種を進めるため鹿児島市と鹿屋市での大規模接種会場開設にも踏み切った。しかし、専用サイトにアクセスが殺到し、一時予約不能になった。準備不足で混乱を招いたことは今後の教訓としなければならない。
 一方、コロナの影響で売り上げが半減した事業者に業種を問わず最大30万円を給付する一時支援金を導入。県議会の要請を踏まえたもので、臨機応変に対処する柔軟性を見せた。疲弊する地域経済をどう立て直すか。コロナ収束後も見据えた対策が欠かせない。
 気掛かりなのは、賛否が分かれる重要な課題になるほど知事自身の意思が見えづらくなることだ。
 九州電力川内原発(薩摩川内市)の運転延長問題では「判断材料が出そろっていない」との説明を繰り返し、賛否には踏み込まない。
 西之表市馬毛島への米軍機訓練移転と自衛隊基地整備計画についても「国は十分な説明責任を果たすべきだ」と述べるにとどまる。
 県のトップとして現時点でどう考えているのか、国や県民に自身のスタンスを明確にすべきではないか。そこから議論を深めていくことこそ、県政のかじ取り役に課せられた責務である。