[九州農業情勢] 食料基地さらに充実を
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 九州農政局が農業情勢をまとめた2021年版「見たい! 知りたい! 九州農業」は、需要が高まっている畜産を特集した。
 19年の九州の畜産産出額は8315億円で、10年前に比べ3割増え、全国産出額の26%を占めるとして「わが国最大の供給基地」と強調した。
 畜産をはじめとする食料の生産をさらに増やし、農業を地域産業の核として発展させなければならない。
 九州の19年農業産出額はコメ不作や野菜価格の低下により2年連続で減少し、1兆7520億円だった。都道府県別では北海道、鹿児島、茨城、千葉、宮崎、熊本の順で、南九州が上位を占めた。
 畜種別の産出額では、鹿児島県は肉用牛、豚、ブロイラーが全国トップで、鶏卵は3位。宮崎県とともに畜産は県農業の6割を超えており、南九州の畜産王国は揺るぎない。
 今後も経営基盤を強化しながら、ブランド化や6次産業化、生産コスト削減を一層進めていくことが必要だ。労務管理も大切だろう。国には畜産物の適切な流通管理や知的財産保護、資源循環型経営への支援を求めたい。
 一方、国が力を入れる農林水産物・食品輸出では、20年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で水産物の出荷が落ち込み、前年比8%減の899億円で4年ぶりに減少した。
 輸出を積極的に拡大している例として、東南アジアにキャベツを輸出している指宿市の大吉農園を取り上げた。品質・鮮度にこだわり、シンガポールや台湾などから寄せられる商品サイズの要望にも柔軟に応じているとした。人口減少で国内市場が縮小する中、今後は海外展開がますます重要になる。
 ほかの事例では、「辺塚だいだい」を使って大手飲料メーカーと新商品を開発するなどブランド展開を図る鹿児島きもつき農協(鹿屋市)なども挙げている。意欲的な経営者がこういった先進例に続くことを期待したい。
 新規就農者は2881人で、うち鹿児島県が733人と最も多かった。九州農政局によると、就農希望者が栽培技術や農業経営を学ぶ研修施設は県内に21カ所あり、九州では一番多いことなどが背景にあるとみられている。
 県立農業大学校(日置市)の今春の定員充足率は、前年度に比べ10ポイント程度増え、近年の減少傾向に歯止めがかかった。農業系高校以外で出前授業や説明会を行い、学科ごとに会員制交流サイト(SNS)を活用して情報発信するなど人材確保に力を入れているのが奏功したようだ。
 就業先として農業の魅力を高めるためには、経営を柔軟に展開し、収益をさらに増やす必要があるだろう。国や県、市町村は一丸となって農業振興を図るべきである。