[熱海土石流] 盛り土の点検急ぎたい
( 8/4 付 )

 静岡県熱海市伊豆山で大規模な土石流が発生してから1カ月がたった。20人以上が亡くなり、警察や消防による行方不明者の捜索が続いている。
 水道などのインフラは徐々に復旧しているが、宅地には大量の土砂やがれきが積まれたままになっている。完全撤去には2~3カ月かかる見通しだ。
 さらに、土砂の大半は起点にあった盛り土とみられる。今も残っており、大雨が降れば再び崩落する危険がある。盛り土は鹿児島県など全国各地に存在する。台風シーズンを前に、各自治体は点検を急がなければならない。
 土石流は7月3日午前に発生した。計約5万6000立方メートルが崩れ落ち、住宅や店舗など約130棟をのみ込みながら川に沿って約2キロ下の海に達した。
 土石流の起点は標高約400メートル付近にあり、盛り土で埋められる前の現場は谷で、水が集まりやすい地形だった。そこへ降った記録的な大雨が崩落の引き金になったと指摘される。
 再発防止に向け、鹿児島県は盛り土が確認された砂防指定地や大規模造成地など469カ所を抽出、許可申請通りの構造になっているのかなど点検し、月内に結果をまとめる。
 東日本大震災などでも大規模造成地で盛り土の崩落が起き、宅地や公共施設に被害が出た。このため、鹿児島市などは盛り土のおおよその位置や規模を示すマップを作成し、各自治体がホームページなどで公開している。
 マップで示された場所が必ずしも危険というわけではない。ただ、自宅の周辺に盛り土があるかどうかを確認することで防災意識が高まるだろう。被害の軽減に役立てたい。
 特に対策が急がれるのは建設残土である。大規模工事では大量に排出される。かつては海の埋め立てにも使われたが、その後需要がなくなり不適切な処理が問題となっている。
 熱海市の土石流の起点では、盛り土に木くずなどの産業廃棄物を埋めるといった問題行為が繰り返され、土地の所有者に複数回、行政指導していたことが県や市の調査で判明している。
 行政の監視は行き届いていたのか。被災者からは「人災だった」との声が上がり、損害賠償請求を検討する動きもある。原因を究明し、責任を明確にしなければならない。 
 盛り土全般を規制する法律がないことも惨事を招いた一因ではないか。悪質な手法で建設残土を運び込む業者への対策に悩まされてきた自治体は多く、全国知事会は全国統一の法規制を設けるよう国に求めている。
 国土交通省は建設残土の発生場所から最終処分先まで一元的に追跡可能にするシステムの実証を進めている。同様の災害を二度と繰り返さないためには、悪質な行為を見逃さない仕組みづくりが不可欠である。