[新型コロナ・入院厳格化] 急変見逃さない体制を
( 8/5 付 )

 政府は、新型コロナウイルス患者の入院要件を厳格化し、感染急拡大地域では重症者と重症化リスクの高い人以外、自宅療養を基本とする新たな方針を決めた。
 感染急拡大で病床不足の懸念が強まる中、限られた医療資源を重症者の治療に集中させる苦肉の策だ。病床が逼迫(ひっぱく)する地域では、高齢者や基礎疾患のある人も入院できない可能性がある。
 医師も看護師もいない自宅で療養中に症状が急激に悪化すれば命に関わる。患者の不安は大きい。政府は急変の兆候を確実に察知し、迅速に対応する体制づくりを急がなければならない。
 これまでは軽症や無症状が自宅または宿泊療養で、中等症以上は原則入院だった。新方針では、中等症の入院対象を酸素投与が必要な人や糖尿病などの疾患を持つ重症化リスクの高い人に限定する。
 重症化リスクは、医師によって見方が分かれることも想定される。全国知事会は入院対象から外れる中等症の基準を示すよう求めているが、政府は応じていない。医療現場に判断を丸投げせず、基準を早急に示すべきだ。
 国内では感染力の強いデルタ株の影響で感染拡大に歯止めがかからない。緊急事態宣言が発令中の埼玉、千葉、東京、神奈川、大阪、沖縄6都府県のうち、大阪を除く5都県の病床使用率はステージ4(爆発的感染拡大、50%以上)の水準に達している。
 6都府県だけでも自宅療養者は既に約3万人に上り、新方針でさらに増える見通しだ。新型コロナでは容体が急変する恐れもある。春の「第4波」では大阪で重症者病床が埋まり、自宅待機中に死亡する事例が相次いだ。このような悲劇を繰り返してはならない。
 患者が安心できる自宅療養にするためには、きめ細かな健康観察を徹底する必要がある。だが、これを担う保健所は、感染拡大の波が来るたび大きな負担を強いられてきた。急増する自宅療養者に的確に対応できるのか。政府の手厚い支援が不可欠だ。
 政府は地域の診療所による往診やオンライン診療を充実させる構えだ。しかし、実際に診療に当たる医師からは機材やマンパワーの不足から、対策の実効性を疑問視する声も上がる。現場への目配りとともに、医療関係団体との連携が欠かせない。
 新方針には野党だけでなく与党からも撤回を求める動きがある。政府は対応を迫られよう。
 中等症は肺炎や呼吸困難などが見られ、悪化すれば酸素投与が必要だ。決して軽い段階ではない。政府はこうした患者にまで自宅療養を求めなければならなくなった見通しの甘さを反省すべきだ。