[原爆の日] 核禁止の議論に参加を
( 8/7 付 )

 広島はきのう、米軍による原爆投下から76年の「原爆の日」を迎えた。9日には長崎にも鎮魂の日が訪れる。
 核兵器の開発や保有、使用などを全面的に禁止する核兵器禁止条約が今年1月に発効して、初めての原爆の日だ。条約は、惨禍を二度と繰り返してはならないと訴え続けてきた被爆者らの祈りの結晶でもある。
 だが、日本政府は核保有国と非保有国との「橋渡し」をすると述べるばかりで、加盟の意思を示していない。
 初の締約国会議は来年1月にも開かれる。日本はオブザーバーとして議論に参加するとともに、条約を批准し、締約国となるべきだ。
 きのうの平和記念式典で松井一実広島市長は、各国の為政者に禁止条約の支持を要請。日本政府にも、一刻も早く締約国となり、締約国会議にも参加して、「橋渡し役」をしっかりと果たすよう訴えた。
 しかし、日本政府は「核軍縮を前進させる道筋を追求するのが適切」という姿勢で、締約国会議へのオブザーバー参加にも、二の足を踏む。
 式典であいさつした菅義偉首相は、核軍縮の進め方には各国の立場に隔たりがあるとして、「核拡散防止条約(NPT)体制の維持・強化が必要だ」と強調。禁止条約には触れなかった。式典後の会見でも、現時点で条約参加の考えはないと明言している。被爆者らの失望は大きかろう。
 南日本新聞社加盟の日本世論調査会の最近の調査では、禁止条約に日本が「参加すべきだ」と答えた人が71%、第1回会議にオブザーバーとして「出席すべきだ」とした人も85%に上った。
 条約参加を求める人の約6割が「唯一の戦争被爆国だから」を理由に挙げている。国際社会で被爆国としての責務を果たすべきだという国民の期待を政府は真摯(しんし)に受け止めてもらいたい。
 今も世界には約1万3000発の核弾頭が存在する。今年3月には英国が核弾頭保有数の上限を180発から260発に引き上げると表明した。米中の対立は深まり、核なき世界への道のりは混沌(こんとん)としている。
 米国の「核の傘」の下で核抑止力に依存しながら、核軍縮をも訴える「二重基準」の日本が、世界から信用されるのか。菅首相は核兵器に頼らない安全保障の在り方を模索するべきだ。
 原爆直後に降った「黒い雨」を巡っては、原告84人を被爆者と認めた広島高裁判決が確定した。
 今回の原告以外にも被害を訴える人たちがおり、国が指定する地域の外で原爆に遭った長崎の「被爆体験者」も認定を求めている。
 被爆者健康手帳を持つ生存被爆者の平均年齢は83.94歳で高齢化が進む。国はすべての被害者を救済し、支援策充実にも取り組まなければならない。