[入管施設女性死] 低い人権意識が招いた
( 8/12 付 )

 名古屋出入国在留管理局の施設で3月、収容中の33歳のスリランカ人女性が体調を崩し死亡した問題で、出入国在留管理庁が調査報告書を公表した。
 女性の体調不良の訴えを仮放免狙いの誇張だと疑い取り合わなかった職員の危機意識の低さや、容体の急変に迅速に対応できない医療体制の不備が明らかになった。内外に根強い人権侵害の批判が裏付けられた形でもある。
 入管施設が収容するのは在留資格のない外国人だが、命の重さに何ら変わりはない。悲劇を繰り返さないため入管庁は人命を預かる自覚を強く持ち、抜本的な改革に取り組むべきである。
 死亡したウィシュマ・サンダマリさんは2017年に来日。家庭の事情で日本語学校の学費を払えなくなり、留学生の在留資格を失って昨年8月に収容された。支援団体によると、今年1月中旬以降、体調不良を訴えていた。
 報告書によると、収容者の診療要請は幹部に報告する内規があるが、ウィシュマさんの点滴や外部病院での受診希望は伝わっていなかった。現場で不要と判断すれば報告しないのが慣例になっていたという。
 死亡当日は土曜で、医療従事者が不在だった。朝から血圧や脈拍が計測不能な状態でありながら、職員が現場判断で生命に危険はないと考え、救急搬送など必要な対応を取らなかった。
 一時的な収容場所という位置付けから医療ケアが後回しになっていたことは否めない。早急に医療体制の充実を図り、収容者の体調に関する情報共有の在り方も見直さなければならない。
 報告書は、うまく摂食できないウィシュマさんをからかうような発言をしていた職員について「明らかに人権意識に欠ける」と指摘した。あまりに不適切であきれるほかない。入管庁は職員の意識改革に全力を挙げるべきだ。
 入管当局が在留資格のない人を原則全て収容する「全件収容主義」を採用する中、近年は送還を拒む人が増え、収容の長期化が課題となっている。収容中の死亡例も相次ぎ、07年以降だけでも17人が亡くなっている。
 長期収容問題は国際社会からも批判を浴びる。事態の打開に向け政府が先の通常国会に提出したのが国外退去を徹底させる入管難民法改正案だった。
 難民認定申請中は強制送還しないとする現行の規定を改め、申請回数を2回に制限する内容に野党が反発。ウィシュマさんが死亡した問題も重なって与野党の対立が続き、事実上の廃案となった。
 改正案は改めて今後の国会で審議される見通しだが、管理強化一辺倒では人権侵害の批判はやまず、国民の理解も広がるまい。昨年で約1%と先進国の中で極端に低い難民認定率の改善も含め、支援・保護の拡充へと転換を図るよう求めたい。