[アフガン情勢] 国連軸に安定化支援を
( 8/18 付 )

 アフガニスタンで民主政権が瓦解(がかい)し、イスラム主義組織タリバンが首都カブールを制圧、全土を掌握した。2001年の米中枢同時テロ後の米英軍による攻撃で旧タリバン政権が崩壊して以来、20年ぶりの復権である。
 アフガンが国際社会から再び孤立し、「テロの温床」となる事態は避けなければならない。各国は国連を通じて結束し、アフガンの安定と平和の構築に取り組むべきである。
 タリバンは今月6日、全土34州のうち南西部の州都を初めて制圧した後、15日には大統領府を占拠した。わずか10日間で政権を奪取した背景には、バイデン米政権がタリバンの勢力拡大を看過し、駐留米軍の撤退方針を変えなかったことがある。
 米国は米中枢同時テロを巡り、首謀した国際テロ組織アルカイダの指導者ビンラディン容疑者をかくまったタリバン政権を崩壊に導いた。それ以降米軍が駐留してきたが、バイデン氏は今年4月、完全撤退方針を表明した。
 20年に及ぶアフガン戦争で、米国は1兆ドル(約109兆円)の戦費をつぎ込んだとされ、2000人以上の米兵が命を落とした。タリバンの復権を受けてバイデン氏は「アフガン人自身が戦う意思がない戦争で米兵が戦い、死ぬようなことがあってはならない」と、改めて撤退判断を正当化した。
 テロ根絶を目指し、米国が仕掛けた戦いは水泡に帰したと言える。タリバンの復権を許した米国には、アフガンの安定に向けて建設的な役割を果たしていく責務がある。
 タリバンは旧政権時代、イスラム教の厳格な適用を主張して女性の教育や就労の権利を奪ったり、世界遺産の大仏立像を爆破したりしてきた。こうした恐怖政治に逆戻りすることがあってはならない。
 国連安全保障理事会は緊急会合でタリバンに「敵対行為の即時停止と交渉を通じた新政府樹立」を呼び掛ける報道声明を発表した。タリバンが連携の姿勢を示している中国とロシアは対話を続け、アフガンが国際社会の一員と認められるよう後押ししてほしい。
 過去には国連を軸に多くの国が連携し、カンボジアやモザンビークなどの内戦を終結させた例もある。米中ロだけでなく、国際社会が一致して支援していくことが今こそ求められる。
 アフガンは、貧困層の医療や農業支援に取り組んだ日本人医師の中村哲さんが19年に武装集団に銃撃されて亡くなるなど治安が不安定で、経済発展が遅れている。
 首都カブールには多くの人が避難しているという。これまでアフガンの安定化につながる元兵士の職業訓練など援助を進めてきた日本をはじめ各国は、食糧や医薬品などの人道支援にも迅速に取り組むべきである。