[新型コロナ・感染急拡大] 泥縄的対応では限界だ
( 8/19 付 )

 政府は新型コロナウイルスの緊急事態宣言を13都府県に、まん延防止等重点措置を初適用の鹿児島を含む16道県に、それぞれあすから拡大する。
 菅義偉首相は会見で、先週末に2万人を超えた新規感染者数に触れ「危機的な状況」との認識を示した。医療体制の構築、感染防止、ワクチン接種の対策を進めることも強調した。
 だが、首相はこれまで何度も同様の決意を口にしたが、効果を上げられていない。感染力の強いデルタ株に対する見通しが甘く、事が起きて慌てて準備するような泥縄的な対応に終始し、国民に不信が広がっている。
 政治への信頼がなければ危機感の共有や外出半減の呼び掛けも響くまい。首相はまず失策を認め、これを教訓にして実効性のある対策を打ち出さなければならない。
 首相は東京に4度目の宣言を決めた7月初旬、「東京を起点とした感染拡大を絶対に避ける」、その後4府県を追加した時には「今回が最後となる覚悟」と決意を示したが、いずれも実現していない。
 対策の切り札とするワクチンについては、「7月末までに1回でも接種した人が人口の4割に達すれば感染者の減少傾向が明確になる」との見通しを示していた。しかし、今月半ばには約5割になったが、感染急拡大に歯止めがかからない。根拠のない楽観論という批判が起こるのも当然だろう。
 ワクチンが感染、重症化を予防する効果は明らかになっている。デルタ株が広がり、接種が遅れている50代以下の感染も目立つ。政府は職場接種や自治体への配分を巡る迷走を反省し迅速に接種が進むよう手を尽くすべきだ。
 また、病床不足を理由に入院を重症者らに限定する方針は、与野党の反発を受けて修正を余儀なくされた。共同通信社が今月中旬に実施した全国世論調査で、政府の病床確保策に不安を感じる人は79.9%に上った。いまだに安心して医療を受けられる体制を整えられていない責任は極めて重い。
 人出抑制について、首相は7月末時点で帰省の自粛を求めなかった。鹿児島県でも新規感染者が100人を超す日が続く。地方での感染者急増は、帰省などに起因する可能性を否定できない。機を逃さず、国民に届くメッセージの出し方を考えるべきだろう。
 宣言や重点措置の期限を9月12日としたのは、首相が求心力を保つため自民党総裁選前の解散が可能な時期を考慮したとの見方がある。
 首相は解散時期を問われるたび「最優先すべきはコロナ対策」と答えてきた。命を守る医療と有効な人出抑制策を早急に再構築し、その言葉にうそがないことを証明してもらいたい。