[災害不明者公表] 県は早急に基準策定を
( 8/22 付 )

 大規模災害が発生して安否不明者が多数に上るとき、被災情報を整理して迅速に救助することが求められる。
 7月に静岡県熱海市で起きた土石流災害では、県は連絡が取れない住民の氏名を公表した。早い段階で安否情報が集まったため被害の実態を把握でき、捜索の効率化に役立った。
 鹿児島県は今後、不明者の氏名公表に関する方針をまとめる予定だ。人命救助と個人情報保護の双方を踏まえ、公益性を考慮した基準を早急に策定する必要がある。
 熱海市の土石流では、静岡県は市から情報提供を受け、発生から2日後に安否を把握できていない64人の氏名を公表した。その直後から本人や家族らから、生存していることや新たな所在不明の情報が寄せられ、公表翌日の夜には不明者は27人に減った。
 災害現場では発生後72時間で、被災者の生存率は急激に下がるとされる。捜索対象者や場所を絞り込めれば、消防や自衛隊は効率的な救命救助が可能になる。熱海市の例は氏名公表が有効な手段であることを示したと言える。
 一方で氏名を公表する際には、事情があって居場所を知られたくない人への配慮も欠かせない。
 熱海市は今回、住民基本台帳の閲覧制限措置がないか事前にチェックした。ドメスティックバイオレンス(DV)やストーカーの被害者をはじめ、所在情報を隠したい人を保護するために不可欠な作業である。
 災害時に行方不明者の氏名を公表するかどうかについて、全国的な基準や公表する主体を定めた法律はなく、都道府県で判断が異なっている。多くの自治体が個人情報保護との兼ね合いで対応に悩んでいるが、国は統一基準の策定には慎重な姿勢だ。
 鹿児島県は個人情報保護条例で、保有する情報を外部に提供することを原則禁じている。一方で「生命、身体または財産を保護するため、緊急かつやむを得ない必要がある場合」は例外とし、火災や地震などの災害時は情報提供できると位置付けている。
 全国知事会は6月にまとめた指針で、不明者の氏名を公表することは、救助活動の効率化・円滑化という点で公益性があると明記した。
 その上で、氏名公表を判断するケースとして(1)個人情報保護を重視し、家族の同意などがある場合に限定(2)家族の同意を前提とせず原則公表(3)迅速な救出救助などに必要な場合-の3類型を示した。都道府県には、考え方を整理して判断基準を定めるよう促した。
 鹿児島は毎年のように災害が起きている。県や市町村は日頃から連携するとともに、不明者の氏名を公表する公益性について、地域の理解を得ておくことが肝心だ。災害に関する情報を社会で共有し、人命救助に役立てたい。