[工藤会死刑判決] 市民襲撃に厳しい判断
( 8/26 付 )

 特定危険指定暴力団工藤会(北九州市)が関わったとされる一般市民襲撃4事件で福岡地裁は、会トップの総裁野村悟被告に求刑通り死刑判決を言い渡した。ナンバー2の会長田上不美夫被告は無期懲役とした。
 直接証拠がない中、間接証拠の積み重ねで野村被告を全事件の首謀者と認定した異例の判断だ。市民社会への甚大な影響を踏まえて組織のトップの責任を認め、厳しく断罪したといえる。
 北九州一帯では2000年前後から工藤会が関わったとみられる凶悪事件が続発。1998年に元漁協組合長を射殺したほか、2012年から14年にかけて元福岡県警警部銃撃、看護師襲撃、歯科医襲撃を繰り返し、2被告は殺人と組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)などの罪に問われていた。
 判決では元漁協組合長射殺に関して漁協関連の利権を巡るトラブルなどを挙げ、両被告には犯行を行う動機が十分にあったと認定。ほかの3事件も両被告に犯行動機があり、厳格な序列が定められた暴力団組織であることを踏まえ、野村被告が意思決定に関与したと推認した。
 死刑適用を判断する最高裁の「永山基準」に従えば、1人殺害での死刑判決は量刑としては重い。
 福岡地裁は意に沿わない存在への襲撃を繰り返してきた工藤会の暴力性を重視。「利欲性が高く、反社会集団の暴力団が計画的に実行している点で、厳しい非難が妥当」として極刑を選択した。実行役でない上位者の刑事責任に踏み込んだ判断は、安心して暮らせる地域を求める市民感覚を重んじたと受け止められよう。
 暴力団トップと配下組員の共謀はこれまでにも、組織的犯行について「経験則上、トップの命令に基づくと推認できる」として認めた14年の大阪高裁判決などがある。トップの責任を幅広く認定するこうした司法判断の蓄積は今後の暴力団犯罪の抑止につながることが期待される。全国の他の地域での暴力団排除の追い風にもしたい。
 一方で、直接証拠なしに共謀を認めてよいのか、別の幹部の関与はないのかなどの疑問を指摘する専門家もいる。両被告は控訴するとみられており、高裁での議論を注視する必要がある。
 北九州市の住民からは安堵(あんど)と同時に残った組員の活動を不安視する声が上がる。
 工藤会の構成員はピークだった08年の約730人が昨年末には約220人に減少。弱体化しているとはいえ解散には至っていない。野村被告は、昨年9月に接見禁止が解かれると、他の組織幹部らと頻繁に会っており、組織内外での影響力がうかがえる。
 警察は監視と摘発で市民の安全確保に努めると同時に、組織を離れる組員の更生にも力を尽くしてもらいたい。