[自民総裁選] 国民にも見える論戦を
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 自民党は菅義偉首相の総裁任期満了に伴う総裁選を9月17日告示、29日投開票と決めた。
 菅氏は早々に再選を目指すと明言。昨年の総裁選に出馬した岸田文雄前政調会長も立候補を正式表明した。ほかに下村博文政調会長と高市早苗前総務相が意欲を示している。
 自民党は衆院で過半数を占め、総裁選は事実上、首相を決める場である。新型コロナウイルス対策をはじめ、政治の課題は山積している。各候補が具体的な政策を示し、国民にも見える論戦が展開されることを期待したい。
 菅氏は当初、衆院選で勝利した後に無投票再選する道筋を描いていたとされる。しかし、8月下旬の党独自の衆院選情勢調査で現有議席を30以上減らすという予測が出た。求心力は低下し総裁選を経ずに衆院選に突入するのはあきらめざるを得なかったようだ。
 総裁選では、この1年の菅政権に対する評価が問われる。
 中でもコロナ対応への国民の目は厳しい。感染拡大は止まらず、医療提供体制は全国で逼迫(ひっぱく)。繰り返される緊急事態宣言で観光や飲食業を中心に人々の生活は苦境に陥っている。
 共同通信社が8月中旬に実施した全国電話世論調査では、新型コロナを巡る政府の対応を「評価する」とした人は28.7%で「評価しない」の67.8%を大きく下回った。こうした厳しい認識を自民党はどう受け止めるのか。
 ところが、党内では二階俊博幹事長が率いる二階派がいち早く菅氏の再選支持を打ち出した。安倍晋三前首相ら党内実力者も支持を表明している。これでは告示前に主要派閥が菅氏支持に雪崩を打った前回の総裁選と同じ構図になりかねない。
 一方、次期衆院選に不安を抱える中堅・若手からは首相交代を望む声も上がる。背景にあるのは8月の調査で31.8%に落ち込んだ内閣支持率だ。2012年に自民党が政権を奪還して以降、最低となり、「選挙の顔」を替えなければ勝てないとの焦りだろう。
 だが、派閥の論理も自分の選挙への影響ばかりを優先する姿勢も、どちらも国民の理解は得られまい。
 コロナ対策以外にも、収束後の経済や福祉政策など多くの課題がある。安倍政権時代の森友・加計学園や桜を見る会、国民から批判の強い「政治とカネ」の問題も積み残されたままだ。
 幅広いテーマについて候補者の考えを聞く場を設け、個々の議員が判断するべきだ。今回は党員・党友投票も実施される。世論に近い党員の声にもしっかりと耳を傾けてもらいたい。
 医療体制強化やワクチン接種拡大、事業者支援などが最優先であることは言うまでもない。総裁選で政治空白をつくり、コロナ対策に手抜かりが生じるようなことがあってはならない。