[部活動の体罰] 人権侵害で許されない
( 9/10 付 )

 鹿児島市の二つの高校で、バレーボール部の活動中に指導の教諭が生徒に暴力を振るっていたことが発覚した。
 生徒への暴力や暴言は人権侵害であり、理由にかかわらず許されない。強い立場の教師が「生徒からの仕返しはない」と確信して、一方的に暴力を行使するのは虐待に等しい。教育、スポーツ界はいまだ根絶できないことを反省し、対策を強めなければならない。
 鹿児島南高では3月下旬、練習試合中に、顧問の40代男性教諭が部員のほおを複数回平手打ちした。鹿児島実業高では6月中旬、コーチの30代男性教諭が練習中などに部員の腹部を殴ったり、ほおを平手打ちしたりした。
 いずれも学校は体罰と認めて教諭を指導から外すなどの措置を取った。しかし、教諭を処分するだけでは根本的な解決にはなるまい。
 教師はなぜ暴力が許されると考えたのか、厳しい指導を求め、暴力を容認する傾向が学校や保護者になかったか。背景や要因を丁寧に検証することが再発防止には不可欠だ。
 2012年に大阪市立桜宮高校のバスケットボール部主将が顧問の男性教諭からの体罰を苦に自殺した事件をきっかけに、運動部活動における指導者の暴力問題が再燃した。
 日本体育協会(現日本スポーツ協会)など統括団体は翌年、スポーツ界全体における暴力行為の根絶を宣言。「暴力行為が指導における必要悪という誤った考えを捨て去る」と表明し、再発防止策も打ち出した。しかし、いまも体罰事案は絶えない。意識の徹底はまだ遠いと言わざるを得ない。
 鹿児島県でも17年、県立高校の元生徒が、バレーボール部顧問の男性教諭から体罰や暴言を受け、転校を余儀なくされたなどとして両親とともに県を提訴した。顧問は謝罪し、県が再発防止策を講じることなどで和解した。
 県教委は和解条項に基づき、外部有識者らによる委員会を設置し、文化系も含めた「部活動の在り方に関する方針」を策定した。「体罰は違法行為であり、生徒の心身に深刻な影響を与える」とし、スポーツ庁のガイドラインなどに沿った適切な指導を求めた。
 課題はいかに実効性を高めるかだろう。県教委は19年から年1回の研修会を開いているが、運用は学校側に委ねられている。方針通りの指導が行われ、指導者に浸透しているか、繰り返し点検することが求められる。生徒が通報しやすい専用窓口の設置や仕組みの構築も必要ではないか。
 この夏盛り上がった東京五輪・パラリンピックはスポーツが持つ価値を改めて教えてくれた。暴力からのアスリートの保護は五輪憲章でも明確にうたわれている。その精神を部活動の現場にも生かし、子どもたちを傷つける暴力を根絶しなければならない。