[南日本経済賞] 地方の課題解決の手本
( 9/12 付 )

 第16回南日本経済賞がインターネットサービスのGMOペパボ(東京)、農業・農産物加工の南風ベジファーム(南さつま市)に贈られる。
 一見対照的な業種だが、衰退が続く地方の課題解決に貢献している点で両社は共通する。さらなる地場産業の商機拡大や雇用創出で県勢浮揚を後押ししてほしい。
 賞は鹿児島の産業発展に顕著な業績を上げている企業や団体を表彰してきた。昨年の第15回は、新型コロナウイルスの世界的流行で経済社会活動にブレーキがかかったため中止され、2年ぶりの選考となった。
 GMOペパボは、市場が拡大している電子商取引(EC)の事業者支援で知られる。佐藤健太郎社長の出身地である鹿児島市に2019年、福岡以外では初となる地方拠点を構えた。以降、自治体や金融機関と連携して県産品のネット出店を支援し、IT人材の育成にも積極的な面が評価された。
 「知識がなくても、誰でもネットで情報発信し、活躍できる環境をつくりたい」が創業の原点という。同社のひな型を利用すれば通販サイトを簡単、安価に開設できるのが売りだ。
 コロナ下で加速したデジタル化は社会を便利にした半面、対応できなければ取り残され、格差拡大を助長する。人の動きが減り商機を失った事業者にとって、ECに参入しやすくした同社の存在は頼もしい。鹿児島との結びつきをさらに強め、地方発の新たな事業展開を期待したい。
 南風ベジファームは鹿児島市の漬物製造会社が母体だ。12年、6次産業化を目指し、南さつま市に移った。耕作放棄地で赤シソ、高菜などを育て、漬物や総菜に加工・販売する。昨年9月にはカフェも開店した。
 最大の特色は農業と障害者をつなぐ「農福連携」の取り組みである。身体や知的、精神といった障害の種別を問わずに受け入れ、40人余りが働く。
 求人を出しても人材を集められず、着目したのが雇用機会に恵まれない障害者だった。計量器のそばに必要量を書いたのぼりを立てるなど働きやすいよう工夫を随所に凝らし、年商は3億円を超す。
 東京パラリンピックで障害者の力と技を目の当たりにし、「得意とする部分を伸ばす」(秦泉寺弘社長)という同社の方針に賛同する人は多いだろう。共生社会への道標にしたい。
 両社が基盤に据えるITと農業は、人口減が進む鹿児島が活力を維持していく上で重要な要素である。地域資源の価値を見つめ直し、テクノロジーと掛け合わせて磨けば、地方の可能性が広がることを示唆する。
 コロナ禍で打撃を受けている事業者にとって、危機を乗り越えるヒントになればいい。