[デジタル庁始動] 情報保護に不安が残る
( 9/14 付 )

 デジタル改革を推進するデジタル庁が発足、始動した。菅義偉首相は行政のデジタル化を看板政策に掲げ、同庁は中央省庁を統率する司令塔となる。
 デジタル化の進展で個人情報のやり取りが広がれば、プライバシーを侵害しかねない。多くの課題や不安を解消し、全ての国民が利便性を享受できる改革にしなければならない。
 改革が目指すのは「スマートフォン一つで、役所に行かずにあらゆる手続きができる社会」である。まずは年末までに、新型コロナウイルスのワクチン接種履歴を証明する「ワクチンパスポート」を電子化する。
 さらに、公的給付金を迅速に給付できるよう預貯金口座をマイナンバーと一緒に事前登録してもらう制度を始める。マイナンバーカードと運転免許証の一体化も進める。
 全国の自治体は2022年度末までに、子育てや介護など暮らしに密接した31の行政手続きをオンライン化する計画だ。妊娠の届け出や児童手当の申請のほか、介護保険の要介護・要支援認定の申請や更新などが対象となる。
 手続きに煩わされず、スピーディーに行政サービスが受けられるようになるのは望ましい。ただ、ITに精通した人材は首都圏に集中し、地方では適任者が不足しているのが実情だ。デジタル庁の支援が欠かせない。
 さらに、新型コロナのワクチン接種ではオンライン予約に戸惑った高齢者が少なくなかった。デジタル機器の扱いが苦手な人への配慮が求められる。
 昨年実施された1人10万円の給付金支給で混乱が生じたのもデジタル化の遅れが原因だ。デジタル庁には各省の情報システム関連予算が一括計上されるなどの権限が与えられた。霞が関の縄張り意識を改め、デジタル改革を強力に進めなければならない。
 民間、行政機関、独立行政法人の三つに分かれている個人情報保護法は一本化され、自治体が独自に定めている個人情報保護条例には全国共通のルールが導入される。個人が識別できないよう加工した情報の利用などをしやすくするためだ。共通ルール化で自治体の厳しい規制が後退してはならない。
 デジタル庁職員約600人のうち、IT企業社員ら民間出身者が約3割を占める。出身企業への情報漏えいや不正の発生も懸念されている。未然防止策を徹底する必要がある。
 弁護士や学者らでつくる公益財団法人はデジタル庁発足に合わせ、電子データによる政治資金収支報告書提出を国会議員らに義務付けるよう要望した。デジタル化によって「政治とカネ」の透明性が図られ、国民が容易にチェックできると主張する。
 政府がデジタル社会の実現に本腰を入れるのであれば、前向きに議論を進めるべきである。