[高齢運転者事故] 加害者にせぬ対策こそ
( 9/22 付 )

 東京・池袋で乗用車が暴走し母子2人が死亡、9人が重軽傷を負った事故で、90歳の被告を禁錮5年の実刑とした東京地裁判決が確定した。
 判決は過失を厳格に認定しており、後を絶たない高齢運転者の事故に改めて警鐘を鳴らしたと言えよう。
 この事故をきっかけに高齢運転者への対策が強化され、運転免許証を自主返納する動きも広がった。だが、交通手段の乏しい地方を中心に買い物や通院などで車を手放せない人は多い。
 加齢とともに認知機能や身体機能は衰える。そのリスクに目配りする一方で、車に代わる移動手段をいかに確保して生活を支えるか。高齢運転者を事故の加害者にしない対策を一層強化しなければならない。
 事故は2019年4月に起き、被告は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた。判決は客観的な証拠に基づき、ブレーキとアクセルを踏み間違え、気付かないまま加速し続けたと指摘し、過失を認定した。
 高齢運転者の事故では、アクセルやブレーキなどの操作ミスによるものが目立つ。警察庁によると、75歳以上が過失の最も重い第1当事者となった死亡事故は昨年333件あり、原因別では操作ミスが96件で最も多かった。
 こうした状況を踏まえ、来年6月までに施行される改正道交法では、一定の違反歴がある75歳以上の免許更新に実車試験で技能をチェックする運転技能検査を義務付ける。不合格の場合は免許を更新できない。
 併せて自動ブレーキなど先進安全機能を備えた安全運転サポート車(サポカー)限定免許が導入される。運転に不安がある人にとって新たな選択肢となり、事故防止の効果も期待される。
 一方、池袋の事故後、免許返納は急増。19年は60万件を超えて過去最多となり、うち6割近くを75歳以上が占めた。返納をさらに増やすために移動手段の確保が急がれる中、鹿児島県内で取り組みが広がっているのは心強い。
 例えば、薩摩川内市下甑町青瀬地区では、地区コミュニティ協議会が病院などに高齢者らを車で送迎する。通常は1回150円の運賃を免許返納者は80円に割り引いている。
 JAあいら(霧島市)は、同市や湧水町で高齢者らの買い物支援のため自宅近くの停留所とスーパーを往復する無料送迎を続ける。このサービスで返納を決めた利用者もいるという。
 こうした取り組みが息長く続くためには自治体との連携が欠かせない。導入を希望する他地域へノウハウを提供する体制も整えたい。
 事故防止の徹底を図る秋の全国交通安全運動がきのうスタートした。高齢運転者の問題も家族に任せきりにすることなく、できる限りの対策を社会全体で積み重ねる必要がある。