[新型コロナ・行動制限緩和] 慎重に状況見極めたい
( 9/24 付 )

 政府は新型コロナウイルスワクチンの接種進展を前提に行動制限を緩和する基本方針を決定、実施に向けた実証実験を10月に広域で行う。
 11月までに希望する国民全員に接種が行き渡ると見込んでおり、そのタイミングで感染拡大の防止とともに、社会経済活動の正常化へ道筋を付ける狙いがある。
 経済界は歓迎するが、医療界などでは国民の気の緩みにつながり、感染再拡大を招きかねないと慎重論が根強い。政府は感染や医療の状況を見極め、緩和に踏み切るスケジュールなど慎重に判断しなければならない。
 政府の緩和方針はマスク着用といった基本的な感染防止対策を維持した上で、緊急事態宣言下でも都道府県をまたぐ旅行や出張のほか、大規模イベントの開催を認める。飲食店の酒類提供を容認、大学などの部活動や感染リスクの高い課外活動も原則可能になる。
 こうした緩和策で活用するのが「ワクチン・検査パッケージ」だ。2回のワクチン接種を終えた接種済証か、PCR検査や抗原検査の陰性証明の提示を求める仕組みである。他人への感染を防ぐ一定の効果が期待できるだろう。未接種者が不利益を被らない制度設計も欠かせない。
 ただ、宣言下で酒類提供などを認める方針に対し、政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は国会で異論を唱え、「ワクチンの感染予防効果は完璧ではない」と指摘。全国知事会も「緩和のみが目立ち、国民を楽観させることは不適切」と懸念を示した。
 日本ではワクチンを2回接種した人の割合が人口の5割を超え、アジア・太平洋地域各国もウイルスと共存する戦略に転換し始めている。しかし、懸念材料を積み残したまま緩和に前のめりになれば国民の理解は得られまい。
 実証実験では十分な感染対策を取っている第三者認証を受けた飲食店に酒類提供を認め、コンサートホールでは定員に対する収容率を引き上げる。いずれも接種済証などをスタッフが確実にチェックできるかどうか検証する。福岡県などが参加する見通しだ。
 長引く自粛で飲食店など多くの業種が苦境に立たされている。実験の結果を広く公開し、国民的な議論を通じて経済活動再開を模索する必要がある。
 政府は段階的に緩和し、感染再拡大時には強い行動制限に戻す方針を示している。だが、それでは宣言を繰り返し発令し、国民に「自粛疲れ」をもたらした教訓が生かされない。
 冬場に向けて流行の「第6波」は避けられないとみる専門家は多い。コロナ禍からの「出口戦略」を探りつつ、まずは感染者を徹底的に抑え込むことに全力を挙げるべきである。