[東電報告書] 信頼回復への道は遠い
( 9/25 付 )

 東京電力に原子力事業に携わる資格はあるのか。信頼回復への道は遠いと言わざるを得ない。
 柏崎刈羽原発(新潟県)のテロ対策の不備を巡り、東電が「原子力部門全体で核物質防護への意識の低さがあった」とする報告書を原子力規制委員会に提出した。
 福島第1原発事故後の経営状況を踏まえ、防護設備を更新せずに使い続けたことが背景にあるとする。安全より経費削減を重視したと言っているに等しい。福島原発事故の当事者意識は感じられず、あきれるばかりだ。
 規制委は報告書の内容を確認し、今後の本格的な検査計画を策定する。改善が見込めなければ原子炉設置許可取り消しに踏み切ることも視野に、厳正に対処してもらいたい。
 柏崎刈羽原発では2020年3月以降、不正な侵入を検知する設備が複数故障。代替措置も不十分で、テロ行為などに対応できない恐れのある状態が続いていた。その後、運転員が同僚のIDカードで中央制御室に入った問題も発覚した。
 規制委は今年3月に不備の安全重要度を4段階で最悪レベルの「赤」と評価し、原因分析の報告を要求。4月には事実上の運転禁止命令も出した。
 報告書によると、同原発の防護管理グループは侵入検知器が故障しても、監視カメラや巡回強化といった代替措置を取っていれば速やかに復旧しなくてもいいと考えていた。代替措置は社員1人がカメラ映像の監視と侵入警報への対応を兼務しており、警報が鳴ったときは監視が中断していた。勝手な判断の上に、十分な代替措置になっていないことは明らかだ。
 防護設備のリース契約は、従来6年程度ごとだったが、福島原発事故後は継続使用し、故障が増えていた。20年度のリース関係の支払額は15年度の10分の1程度に減少している。
 小早川智明東電社長は「安全をないがしろにしたわけではない」とコスト優先を否定したが、言葉通りには受け取れない。花角英世新潟県知事が「そもそも(東電が)適正に原発を運営する能力があるのか疑問符が付いている」と指摘するのも当然だ。
 東電は7月に公表した経営再建計画で柏崎刈羽原発の再稼働を収益改善策の柱に据え、収益改善効果を1基当たり約500億円と算定する。繰り返す不祥事は、自ら経営再建の道を断つようなものである。
 原発のテロ対策は、国際原子力機関(IAEA)の勧告を受けて近年、強化の動きが続く。新規制基準は航空機衝突などに備えた「特定重大事故等対処施設」の設置も義務付ける。
 実効性のある安全対策が取られなければ再稼働は望めないことを、東電は肝に銘じなければならない。