[クアッドと中国] 地域安定へ対話模索を
( 9/26 付 )

 日本、米国、オーストラリア、インドの4カ国首脳がホワイトハウスで初の直接会合を開き、台頭する中国を念頭に、「インド太平洋の安全と繁栄の強化のため自由で開かれた秩序の促進」を掲げる共同声明を発表した。
 「クアッド」と呼ばれる枠組みを構成する4カ国は、新型コロナウイルス対策やインフラ整備などでの協力に合意し、首脳、外相会合を毎年開く方針で一致。インド太平洋地域の重要な課題に民主主義陣営が結束して対処する姿勢を鮮明にした。
 対中包囲網を構築する動きに中国は警戒を強めている。このまま力の対決に進めば、地域の安定が遠ざかるのは避けられない。4カ国は連携を軸に、中国との対話の道を模索すべきだ。
 バイデン米政権は専制主義勢力と位置付ける中国に対抗するため、クアッドで幅広い分野での連携を広げたい狙いがある。今回の首脳会合でも中国との向き合い方が主要テーマとなった。
 共同声明では、中国が海洋進出を進める沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海や南シナ海での海洋秩序への挑戦に対応すると明記。菅義偉首相も首脳会合で力を背景とした同海域の現状変更の試みに「深刻な懸念」を表明した。
 さらに2030年までの「宇宙強国」確立を目指す中国をにらみ、宇宙分野で作業部会を創設する。災害への備え、衛星データの交換などで協力し、宇宙空間での国際ルールづくりを主導したい考えだ。
 対中国依存を低減させる観点から、半導体を含む重要技術・材料の強靭(きょうじん)なサプライチェーン(供給網)確保に積極的に取り組む。新型コロナのワクチンの生産・供給拡大で協力することも確認した。
 また、北朝鮮には完全な非核化への取り組みなどを要求し、日本人拉致問題の即時解決の必要性も確認した。拉致被害者家族の高齢化が進む中、早期帰国の実現に向けて連携して手を尽くす必要がある。
 ただ、米国を中心に対中包囲網の構築が進む中、米中両国は相手の出方を探っている面がある。バイデン大統領は先の国連総会の一般討論演説で、中国の名指しを避け「新冷戦は望まない」と述べた。中国の習近平国家主席も国連演説で米国に共存を呼び掛けた。
 米国が抜けた環太平洋連携協定(TPP)に中国が申請した今こそ、両国の対話を進める好機と言えよう。公正で透明度の高い経済連携を目標に、現状では復帰しない考えを示す米国にも日本などは復帰を働き掛けるべきだ。
 日本にとって米国は安全保障の基軸とする同盟国で、中国は最大の貿易相手国である。ともに結び付きの深い両国と今後どう向き合うか。菅首相の退陣後の新政権には中長期的な視点に立った外交戦略が求められる。