[性犯罪規定] 実態に即し制度改正を
( 10/2 付 )

 強制性交や強制わいせつ罪など刑法の性犯罪規定見直しについて、上川陽子法相が法制審議会に諮問した。
 2017年の刑法改正で厳罰化が行われたが、その後も無罪判決が続き、被害者団体からは「加害者が野放しになっている」と批判の声が上がる。法務省の検討会で見直しを議論したものの、結論はまとまらなかった。
 上川氏は「性犯罪被害は非常に根深く、長期に傷痕を残すという認識を共有し、実態に即した施策を検討することが重要」と述べている。当事者の声に耳を傾け、一日も早い制度改正に取り組むべきだ。
 法改正から4年余が経過し、当事者が声を上げ始めたことで、規定が被害実態に合わない現実があらためて浮き彫りになってきた。
 19年には未成年の娘に性的暴行をした実の父親を名古屋地裁岡崎支部が無罪にするなど、性犯罪で4件の無罪判決が相次いだ。これをきっかけに性暴力への社会の無理解や法制度の不備を訴える「フラワーデモ」が全国に広がった。社会的な関心は高まっている。
 性犯罪の処罰範囲では、被害者の抵抗を著しく妨げるほどの加害者からの暴行や脅迫があったことが、強制性交罪の成立要件となっていることが最大の焦点だ。
 検討会が5月にまとめた報告書では「同意のない性交」を全て処罰対象とするよう強く求める被害者側の意見と、慎重な意見の両論が併記された。
 性暴力被害者らの団体の調査では「体が動かなかった」など、暴行や脅迫がなくても被害に遭ったとの回答が多数あった。要件が実態と合わず、立件を阻む壁になっている現状は明らかだ。
 反対する立場からは、同意の有無を確認するのは難しく、冤罪(えんざい)を生む恐れがある、との懸念の声が上がる。リスクを取り除くため、取り調べに弁護人が立ち会うなど、防止策の導入も同時に検討してもらいたい。
 法制審では公訴時効の期間や、性交に同意する能力があるとみなす「性交同意年齢」、地位や関係性を悪用した性行為の処罰なども論点となる。
 性犯罪は「魂の殺人」といわれるほど精神的ショックが大きい。被害の申告に時間がかかり、公訴時効(強制性交罪は10年)に阻まれて立件できないケースもある。
 検討会では、証拠の散逸を理由に公訴時効の撤廃には慎重な意見があったが、延長については異論はなかった。一方、性交に同意できる年齢の13歳からの引き上げや、教師など目上の立場を悪用した性行為への処罰には、明確な方向性を打ち出せていない。
 法制審で再び結論を先送りするようなことになれば、被害者の放置につながりかねない。人間の尊厳を守るための集中的な論議を求めたい。