[岸田内閣発足] コロナとの共存着実に
( 10/5 付 )

 岸田内閣が発足した。閣僚20人のうち、衆院当選3回の若手を含む13人が初入閣した。「生まれ変わった自民党を国民に示す」。岸田文雄首相の宣言に沿った人選だろう。
 首相は次期衆院選を今月31日に実施する方針を固めた。約9年間に及んだ安倍・菅政治の強権的手法に国民の不満や不信感が高まっており、新しい党の姿をアピールしたいに違いない。
 だが、党役員の顔ぶれを見ると、安倍晋三元首相や麻生太郎副総裁らへの配慮がうかがわれる。森友学園問題など「政治とカネ」の透明性確保が宣言実現の鍵を握ると言える。
 新型コロナウイルス緊急事態宣言とまん延防止等重点措置は約半年ぶりに全面解除された。今後は感染対策と経済活動を両立する「ウィズコロナ」の社会を模索していくことになる。
 外交や安全保障、地球温暖化、エネルギー政策などの課題も山積する。岸田首相は臨時国会では各テーマについて明確なビジョンを示し、野党との論戦に臨まなければならない。

■地方創生に本腰を

 最優先すべき課題は、流行「第6波」を食い止め、国民の生活や企業活動を軌道に乗せる取り組みである。
 まずはワクチンの2回接種完了の比率を可能な限り高める必要がある。既に約6割が終えたが、先行する国の多くは接種率が7割で頭打ちになる「7割の壁」を突破できずにいる。若者世代への普及が課題となる。年内にも始まる3回目接種へワクチンを安定的に確保したい。
 同時に医療の逼迫(ひっぱく)を避けなければならない。コロナ対応のベッドを増やし、臨時医療施設などの整備も急務だ。設備が限られる開業医が中心の日本の医療界でコロナ病床と人材をどう確保するのか、中長期的な視点での検討も必要だろう。
 岸田首相は感染症対策の司令塔となる「健康危機管理庁」(仮称)の創設を目指す。機構改革には予算とエネルギーを要するが、有効なシステムを構築し、国と地方自治体のスムーズな連携にもつなげてほしい。
 コロナ禍で大きな打撃を受けている経済の再生を図るため、事業者支援として数十兆円規模の経済対策を実施する。
 コロナ対策を担う後藤茂之厚生労働相や山際大志郎経済再生担当相はともに初入閣である。不安も残るが、さまざまな事態に対処できるよう緊密に連携しなければならない。
 東京一極集中の是正には「デジタル田園都市」構想を挙げる。先端技術を活用し地方の医療・教育を充実させ、都市部と地方の“距離”を縮める狙いだ。だが、これまでの地方創生は掛け声倒れに終わった感がある。
 地方の活性化につなげたいのが「令和版所得倍増」だ。多くの人の所得を引き上げて経済の好循環を実現させ、中間層の拡大と少子化の解決を目指す。本腰を入れて取り組んでほしい。
 さらに、小泉構造改革以降続けてきた規制緩和によって競争を強める新自由主義的な政策を転換、成長と分配の好循環で格差是正に力点を置く考えを明らかにしている。
 こうした政策は一つずつ着実に実行していかなければならない。そのためには裏付けとなる財源など丁寧に説明し、理解を求めていくことが重要だ。

■核廃絶へ指導力を

 外交分野は対中関係が焦点になる。バイデン米大統領と信頼関係を構築しつつ、中国とは経済面で結びつく。米中の対立が激化する中、どうバランスを取っていくのか試される。
 日本人拉致問題も待ったなしである。菅政権の1年間、表だった進展は見られず、北朝鮮はミサイル発射などで挑発行為を繰り返している。米国と連携し、解決の糸口を早急に見いださなければならない。 
 将来世代にツケを残さないための政策には、特に力を入れてもらいたい。
 その一つが地球温暖化対策だ。菅義偉前首相は温室効果ガス排出を2050年までに実質ゼロにするとし、「30年度に13年度比46%減」の目標も打ち出した。岸田首相は既存の原発の再稼働を進める考えを示しているが、再生可能エネルギーも積極的に導入すべきだろう。
 さらに、被爆地・広島の衆院1区選出のため、被爆者団体などからは核兵器禁止条約の締約国会議出席など世界の核兵器廃絶へリーダーシップを求める声が高まっている。核なき世界へどう道筋を付けるのか。より踏み込んだ対応を期待したい。
 岸田首相は各党代表質問の後、14日に衆院を解散。衆院選は19日公示、31日投開票とする方針を固めた。永田町は選挙モードに一気に突入する。
 コロナ対策のほか、中長期的な課題、世界規模のテーマなど論点には事欠かない。臨時国会の日程は限られているが、総選挙で有権者の判断材料となる論戦を展開してほしい。