[代表質問] 物足りない首相の答弁
( 10/12 付 )

 岸田文雄首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が、衆院本会議で始まった。
 衆参両院であすまで行われ、衆院は14日に解散される。政権選択となる衆院選前の最後の国会論戦となるにもかかわらず、野党の質問に対する首相の答弁は具体性に欠け、踏み込み不足が目立った。
 首相は自身が掲げた政策を肉付けしてもっと丁寧に訴えるべきだ。与野党も迫る衆院選に向けて有権者に判断材料を示す必要がある。
 立憲民主党の枝野幸男代表は新型コロナウイルス対策を巡り、自宅療養者が急増し死者が相次いだ状況を「自民党政権の失敗と言わざるを得ない」と厳しく批判した。
 その上で「(立民は)費用を国が負担し全入国者を10日間隔離し、新規感染者の周囲まで速やかに公費でPCR検査できる体制を整える」と述べた。
 これに対し首相は水際対策の必要性は認めつつ、病床が十分に稼働しなかった反省を踏まえ感染再拡大に備えた対応策の全体像を早急に示す方針を表明するにとどめた。時期を含め具体的内容には踏み込まず、物足りなかった。
 衆院選の大きな争点になる経済政策では、成長と分配の力点の置き方を巡り、見解の隔たりが浮き彫りになった。枝野氏は「好循環の出発点は適正な分配にある」と主張し、首相は「まずは成長を目指すことが極めて重要」と指摘した。
 首相は安倍政権が掲げ、菅政権が引き継いだアベノミクスについて「民主党政権の経済苦境から脱し、雇用を拡大した。経済成長、体質強化に大きな役割を果たした」と評価。格差を拡大させたと批判する立民との認識の違いの大きさが明らかになった。
 一方、首相は自民党総裁選で言及した金融所得課税の見直しについて「優先順位が重要。賃上げに向けた税制、下請け企業対策の強化などから始める」と述べた。トーンダウンした印象は否めない。
 株価の下落傾向や投資の冷え込みに対する懸念を踏まえた判断とみられるが、格差是正を掲げた政治姿勢がぶれたと今後追及される可能性がある。
 首相は安倍・菅政権の「負の遺産」と向き合う姿勢も問われた。
 森友学園を巡る公文書改ざんの再調査には、検察の捜査で結論が出ていることなどを挙げ、改めて否定的な見解を示した。
 日本学術会議の会員任命拒否問題にも「一連の手続きは終了した」と述べるなど結論は変わらないという認識をうかがわせた。
 いずれも自身が約束した「国民が納得する丁寧な説明」とは程遠い姿勢と言える。このままでは国民の政治への信頼は取り戻せまい。