[衆院解散] 安倍―菅政治が争点だ
( 10/15 付 )

 衆院が解散され、31日の投開票に向けて戦後最短の決戦が事実上スタートした。
 衆院議員は21日に任期満了を迎えるとはいえ、岸田内閣は4日に発足したばかりで何ら実績を上げていない。
 新内閣発足後、岸田文雄首相の所信表明演説に対する代表質問が衆参両院で3日間実施された。だが、これで岸田首相をはじめ閣僚の資質や能力を見極めることは困難である。
 そこで問われるのは前回選挙以降、4年間にわたる安倍-菅政権下の自民党政治だろう。
 4年前の総選挙でも争点となった森友学園の国有地売却を巡る公文書改ざん問題は依然、決着していない。「政治とカネ」を巡る不祥事が相次ぎ、日本学術会議会員の任命拒否問題では「強権体質」が非難された。安倍政権の「アベノミクス」や新型コロナウイルス対策も争点に違いない。
 衆院選は19日に公示される。各党や立候補予定者は公約を練り、政権選択にふさわしい選挙戦を展開しなければならない。

■4年間の検証必要
 政府、与党内では11月前半の投開票が有力視されていた。岸田首相が急きょ日程を早めた真意はどこにあるのか。
 首相は代表質問などで「国民の最新の信任を頂いて国政を担う」と説明した。来年度予算案の編成作業や新型コロナ対策への支障を避けるためとの見方もある。
 だが、新内閣発足の余勢を駆って選挙に持ち込みたい狙いが透けて見える。臨時国会では代表質問だけを実施し、野党が求めた一問一答形式の予算委員会開催に応じなかった。新閣僚のぼろが出るのも恐れたのではないかとの疑念が湧く。
 予算委で甘利明自民党幹事長の現金授受問題の追及をもくろんでいた野党は「政治とカネの問題隠しだ」と反発した。
 そもそも臨時国会は立憲民主党など野党4党が7月、新型コロナ対応を議論するため、憲法53条の規定に基づき、召集を求めていた。
 53条は衆参両院いずれかで総議員の4分の1以上が要求すれば、内閣は臨時国会召集を決定しなければならないと定める。だが、当時の菅内閣は拒否したままだった。
 野党は2017年6月にも森友、加計学園問題を追及するため臨時国会召集を要求。だが当時の安倍内閣は98日後に開会し、冒頭に衆院を解散した。要求に長期間応じなかったのは違憲と指摘する専門家もいる。
 国会を軽視し、説明責任を果たそうとしない姿勢が引き継がれたと言えるのではないか。その結果、「政治とカネ」の問題などが「負の遺産」として積み残されたままになっている。
 岸田首相は所信表明演説で「国民の声を真摯(しんし)に受け止め、かたちにする、信頼と共感を得られる政治が必要だ」と訴えた。
 理想とする政治を実現するには、まずは「負の遺産」としっかり向き合うべきだ。4年間を検証し、安倍-菅政治からどう脱皮を図っていくのか示さなければならない。
 だが、代表質問の答弁を聞く限り、従来の政権との違いは見えづらい。アベノミクスの意義を強調し、森友学園を巡る問題の再調査を否定した。「岸田色」をどこまで打ち出せるかが選挙戦の鍵を握るだろう。

■対立軸を示したい
 立民は旧立民、旧国民民主両党などが合流し、昨年9月に発足した。現在、衆院勢力は100人を超え、野党第1党として一定の存在感を示してきた。
 今年4月の衆院北海道2区と参院長野選挙区の補欠選挙、参院広島選挙区再選挙で野党系候補が全勝。枝野幸男代表は、政府の新型コロナ対策の遅れを厳しく批判した結果、「菅政権を事実上退陣に追い込んだ」と強調し、政権交代を訴える。
 「市民連合」の仲介により共産、社民、れいわ新選組の野党3党と消費税減税や原発のない脱炭素社会追求など事実上の共通政策を結んだ。小選挙区289のうち約220選挙区で野党候補は一本化された。
 だが、政権交代を実現した09年衆院選の旧民主党のような有権者の期待が高まっているとは言い難い。9月の共同通信の世論調査で立民の支持率は12.3%で46.0%の自民に大きく離されている。
 公約には「1億総中流社会」の復活を掲げ、アベノミクスからの脱却を主張する。一方、自民も「新しい資本主義」で分厚い中間層の再構築を公約として提示している。対立軸となる具体的な方策や実現性を明確にし、政権担当能力を示さなければ国民の支持は得られまい。
 コロナ下で初めて実施される本格的な国政選挙である。社会の分断や格差の拡大、医療体制の充実など課題が山積している。それぞれの処方箋とともに、日本の進むべき針路について活発な論戦を交わしてほしい。