[コロナ禍と新聞] 事実に基づく報道こそ
( 10/16 付 )

 新聞週間が始まった。今年の代表標語は「答えなき 時代のヒントを 探る記事」である。
 作者の山野大輔さん(堺市)は「新型コロナウイルス感染拡大など先行きが見通せない中、新聞をめくることで、確かなものを知りたい気持ちが募っていることを表現した」とコメントしている。
 コロナ下でなお、インターネットを中心に真偽不明の情報があふれている。不安な時代だからこそ、事実に基づいた報道をあらためて肝に銘じたい。
 鹿児島県では昨年、「コロナに感染した学生が退学処分に」「感染した学生の父親が自殺」などの誤った情報がネット上を飛び交った。
 ネットが発信源となり、口コミも加わって状況を悪化させた。感染拡大で人々が敏感になっている中、間違った情報が広がる状況は見過ごせない。
 ネットの利用は増える一方だ。総務省が発表した2020年度情報通信メディアの利用状況に関する調査では、平日のネット平均利用時間がテレビの視聴時間を初めて上回った。
 テレビ、ラジオ、新聞はいずれも前年度と同水準である。ネット利用時間は10~20代が特に長く、コロナ感染拡大で若者の在宅時間が増えたことなどが影響したとみられている。情報の真偽を見分ける能力を身に付けていく必要がある。
 南日本新聞社など全国の地方紙12社が9月に開いたフォーラムでは、コロナ報道をテーマに議論した。緊急事態宣言下の飲食店や、クラスター(感染者集団)が起きた学校にできる限り足を運んで生の声を伝えたことなどが報告された。
 県が非公開にした情報を独自に報じると、ネット上の猛烈な不満や不安が収まった事例や、生活困窮者や外国人に焦点を当てて地域のありようを探った報道も紹介された。
 講評した政治学者の姜尚中さんは「地方紙は信頼できる最後のよりどころであるということを日々の記事の中で示していく必要がある」と述べた。さまざまな情報が飛び交う中、事実を正確に伝え、地域の人々の疑問や不安に応えることが地方紙に課せられた役割に違いない。
 今年の標語には、鹿児島大学3年鮫島由宇さんの「新聞と泣いて笑って考える」も佳作に選ばれている。
 本紙「若い目」に、100歳の祖父から教師になる兄へ激励の手紙が届いたことを投稿すると、知人らから「感動した」と声を掛けられた。この体験から「新聞を見て泣いたり笑ったり、社会のことを考える人がいっぱいいる」と標語を思いついたという。
 確かな情報を多様な視点で伝える努力を欠かさず、こうした声に向き合い続けていきたい。