[原油高騰] 生活や産業への支援を
( 10/23 付 )

 原油価格が高騰している。米国の原油先物市場は約7年ぶりの1バレル=80ドル台で高止まりし、円安の進行もあって国内のガソリン、灯油価格の大幅な上昇が続く。
 液化天然ガス(LNG)も連動して価格が上昇し、電気・ガス料金も値上げされる。冬の暖房需要期に向けて家計や企業の負担増は避けられない。輸送業から農業、漁業などまで影響は幅広い業種に及ぶ。
 新型コロナウイルスの感染状況が落ち着き、動き始めた経済に水を差す懸念がある。政府は産油国への増産を要請すると同時に産業や国民生活の実態を把握し、支援を急いでもらいたい。
 急騰の要因の一つは、各国でワクチン接種が進み、経済活動が再開して原油需要が高まったことだ。一方、主要産油国は、世界的な脱炭素の流れを受けて増産に慎重とされる。
 国民生活への影響は大きい。総務省がきのう発表した9月の全国消費者物価指数は、前年同月と比べて灯油が20.2%、ガソリンが16.5%それぞれ上がった。
 鹿児島県内でも、離島を含むレギュラーガソリンの平均小売価格は今月11日時点で、7年ぶりの高値となる1リットル当たり169円60銭だった。奄美航路のフェリー3社は11月から、原油価格の上昇分を運賃に転嫁する燃料油価格変動調整金を引き上げる。
 原油先物価格が1バレル=80ドル程度で推移した場合、家計の負担は2021年度後半からの1年間で2万8000円程度増加するとの試算もある。コロナ禍で圧迫を受けてきた低所得層を中心に、さらに困窮する可能性は否めない。
 政府は関係閣僚会議で、主要産油国に増産を働き掛けることを確認、茂木敏充外相はクウェート外相と電話会談して協力を求めた。
 11月上旬に開催予定の石油輸出国機構(OPEC)と非加盟の産油国による会合「OPECプラス」で増産に踏み切るかが今後の焦点となる。原油高騰によるインフレ圧力を警戒するのは米国や欧州連合(EU)も同じだ。国際協調で増産への働き掛けを行う必要があろう。
 国内への対応では、中小企業向けに相談窓口の設置を検討。国は、燃料費高騰に備えた基金などを設けており、関連の業界に周知を徹底する。影響の把握と検証を行い、支援が十分でなければ拡充も急ぎたい。
 2050年の温室効果ガスの排出量実質ゼロに向けて、世界は化石燃料を減らす方向にかじを切っている。しかし、今回の原油高騰による混乱は、いまだに依存度が高い事実を示した。
 日本は経済安全保障の観点からも、特定国に頼らないエネルギーの調達先確保や、一層の再生可能エネルギー拡大に取り組まなければならない。