[衆院選] 分配と減税、財源論議 見極めが必要
( 10/24 付 )

 コロナ禍で人々の所得が落ち込む中、各党は格差是正を重要課題と位置付け、個人への現金給付や消費税減税を訴えている。
 経済格差を意識し、分配を重視する視点は評価できる。だが、本格的な財源論議を置き去りにし、金額や経済対策の規模を競い合うような状況は無責任だ。有権者は慎重に見極める必要がある。
 自民党の岸田文雄総裁(首相)は、公示前日の党首討論会で「国民に十分な現金給付」を実施する考えを強調。企業が稼ぎを人件費に回した割合を示す労働分配率を上げるため、賃上げに積極的な企業への税制支援を訴える。公明党は18歳までの子どもに一律10万円相当の支援を約束する。
 立憲民主党は、年収1000万円程度の人まで所得税を実質免除する時限的な措置や、低所得者への年12万円の現金給付を打ち出した。共産党は1人10万円を基本に給付金を支給すると表明、ほかの党も現金給付や所得税減税に前向きだ。
 安倍政権からの経済政策「アベノミクス」で株高が進んでも、労働者の実質賃金上昇にはつながっていない。現金給付は大半が貯蓄され消費刺激効果は乏しいとの指摘もある。しかし、コロナ下での痛みを和らげる一つの方策であり、一概に否定されるものではない。
 問題は財源だ。幅広い層を対象とした現金給付は米国や英国でも行われたが、いずれも法人税率引き上げや富裕層への増税とセットで提案・導入された。国内では立民と共産が法人税増税などに触れているが、大半は国債発行による借り入れを主張する。軽々に借金に頼る姿勢は疑問である。
 消費税について、自民は10%の税率を維持するが、野党はほぼ一様に引き下げを訴えている。
 立民は5%への時限的な引き下げを主張。共産は5%に下げ、減収分は富裕層や大企業への課税強化で補えるとする。
 日本維新の会と国民民主党も5%への減税を目指すが、期間は維新が「2年を目安」、国民が「経済が回復するまで」とした。社民党は3年間限定で税率ゼロ、れいわ新選組は消費税廃止を公約に盛り込んだ。
 消費税は、特に低所得者の負担感が大きい面はある。税の仕組みの見直しは検討に値するだろう。
 一方で、現職の財務事務次官が、月刊誌で最近の政策論争を「ばらまき合戦」と批判した。分配も減税も代替財源が伴わなければ非現実的だ。
 財政危機を招かないためにも、将来の経済成長をどう促すかの具体策が欠かせない。各党は分かりやすく説明すべきである。