[衆院選] 政治姿勢、信頼をどう取り戻すか
( 10/29 付 )

 安倍、菅政権下で目についたのが、説明責任を果たさない独善的な政治手法だ。首相官邸に権力が集中し、人事を握られた官僚に忖度(そんたく)がまん延、国民の政治不信は増幅した。
 問題にふたをしない。必要な調査を尽くす。包み隠さずに国民に説明する-。こうした信頼される当たり前の政治を取り戻すのは、政治家に課せられた使命である。
 安倍晋三氏が首相だった2017年、国有地が格安で森友学園に売却された問題が表面化し、名誉校長に一時就いた昭恵夫人の影響が疑われた。財務省は関連文書の改ざんを近畿財務局に指示し、元職員赤木俊夫さんが改ざんを苦に自殺に追い込まれた。
 真相はいまだに判然とせず、遺族のほか、野党からも再調査を求める声が上がる。しかし、岸田文雄首相(自民党総裁)は「財務省が徹底して調査し報告書をまとめた。検察の捜査も行われ結論が出ている」と応じない。
 共同通信社が今月上旬に実施した世論調査で「再調査すべきだ」とした回答は62.8%を占め、自民支持層に限っても52.0%に上った。この“民意”を重く受け止めるべきだ。
 安倍政権では、政府主催の「桜を見る会」に安倍氏の後援会員らが多数招かれ、私物化疑惑が浮上した。後援会が前日に主催した夕食会の費用補填(ほてん)問題は東京地検特捜部が捜査している。
 後継首相の菅義偉氏は日本学術会議が推薦した会員候補の任命を拒否した。菅氏は「人事に関わる」と具体的な理由を説明しないまま退陣した。
 一連の「負の遺産」について野党は選挙戦でも追及の声を上げるが、岸田首相は街頭演説でほとんど触れていない。政権党のトップとしてどう考えるのか、改めて有権者に語るべきだ。
 自民で続発した「政治とカネ」の問題も見過ごせない。カジノを含む統合型リゾート施設事業を巡る汚職事件や鶏卵汚職事件といった不祥事に有権者は厳しい視線を向けている。
 19年参院選広島選挙区では、河井克行元法相夫妻による大がかりな買収事件が立件された。妻案里氏陣営に党本部が投入した1億5000万円が買収原資になった疑念はなお残る。
 岸田首相は、河井夫妻からの報告を基に原資ではなかったとする党の説明を受け入れている。国民の疑問を解消しなければ信頼は得られまい。
 安倍、菅政権には野党の臨時国会召集要求に応じず、論戦を避ける姿勢が際立った。岸田首相も「国民に丁寧に説明し、透明性を高めていく」と宣言したが、ようやく実現した先の臨時国会で予算委員会を開かなかった。国民の不信感を払拭(ふっしょく)しようとしない姿勢が問われる。