[衆院選] 自公連立継続、誠実な国会運営を望む
( 11/1 付 )

 第49回衆院選はきのう投開票され、自民党は公明党と合わせて国会を安定的に運営できる絶対安定多数に達したものの、小選挙区で「大物」議員の敗北が相次いだ。
 岸田文雄首相は、就任の10日後に衆院を解散。新内閣の実績がない中、新型コロナウイルスへの対応や経済政策、安倍-菅政権への評価などが争点となった。
 野党は立憲民主党と共産党、国民民主党、社民党が217選挙区で候補者を一本化して対抗。一定の成果をみせたものの、政権交代には至らなかった。
 有権者は引き続き、自公連立政権を選択した。だが、党役員や閣僚経験者の「敗北」は、説明責任を果たしてこなかった近年の政権への批判の表れでもあろう。
 コロナ禍で傷んだ暮らしの修復や高齢化と人口減少、地方活性化に向けた社会のシステムづくりなど、課題は山積する。
 自民党は国民の審判を謙虚に受け止めるべきだ。誠実で丁寧な国会対応に努め、困っている国民を置き去りにしない政治を望む。

■経済成長どう促す
 2年近く続くコロナ禍では、政府の対策が後手に回る場面も多かった。
 ワクチン接種率が人口の7割を超え、感染者数が低い水準に抑えられている今、経済活動の再開も含めて、次に備えることは喫緊の課題だ。
 コロナ禍で厳しさを増した国民生活に手を差し伸べるとともに、医療や保健所の体制を強化し、感染症に強い社会づくりが必要だ。与野党の知恵を集めて中長期的な検討を進めなければならない。
 日本経済をどう成長させるかも問われる。
 第2次安倍政権以降のアベノミクスで株価は上昇したが、実質国内総生産(GDP)や賃金の伸びは鈍い。欧米や韓国で平均給与が伸びる一方、日本はほぼ横ばいで、先進国で下位の水準に落ち込んでいる。
 コロナ禍が生活を直撃し、格差は拡大。分断を是正するための「成長と分配」は衆院選の大きなテーマだった。
 与野党はともに現金給付などの経済対策を打ち出した。苦しい生活を送る世帯や非正規労働者への対応が急がれるのは言うまでもない。だが、“大盤振る舞い”の一方で、裏付けとなる財源の確保策は曖昧で、論議が深まったとは言い難い。
 岸田首相は、成長と分配の好循環を具体化するため、「新しい資本主義実現会議」を立ち上げた。11月上旬にも緊急提言を取りまとめる予定だ。
 首相は「広く国民の所得水準を伸ばす」と強調する。小泉政権以降の新自由主義は非正規雇用を拡大させた。1990年代以降、増加傾向をたどり、貧富の格差を広げた一因とされる。新しい産業の創出などに加え、雇用や賃金システムの変革についても、検討を求めたい。
 コロナ対策で国債の発行は増える一方だ。先進7カ国でも突出する日本の債務をどうするのか。将来世代につけを回さない歳出抑制、財源確保策を具体的に示さなければならない。

■信頼は得られるか
 岸田首相が選挙戦で繰り返したのは「一人一人の声を聞き、丁寧な政治を進める」だった。だが、安倍-菅政治の総括については、発言が変遷し、国民の声が届いているようには見えなかった。
 9年近くの自民1強で政権が安定した半面、国会軽視や官僚の「忖度(そんたく)」も問題になった。野党側は選挙戦を通じて「負の遺産」を追及したが、首相は森友、加計学園や桜を見る会を巡る疑惑などに触れず、論戦がかみ合うことはなかった。
 「政治とカネ」の問題についても総裁選では、「国民に丁寧に説明し、透明性を高めていく」と述べていたが、新たな説明はなされていない。首相の求める「信頼と共感の政治」が実現できるのか疑問だ。
 自民党には、1強がもたらしたさまざまな弊害に対する国民の不信感が募っている。積み重なった疑念に国会で誠実に答えなければならない。
 外交・安全保障や福祉、環境などへの対応はいずれも待ったなしだ。中でも、2050年までに温室効果ガス排出実質ゼロ、30年度に13年度比で46%削減を掲げる日本にとって、環境とエネルギーへの対応は急務である。選択的夫婦別姓など、若者の関心も高いジェンダー平等の問題では、選挙戦を通じて自民党の消極的な姿勢が浮き彫りになった。
 与野党は諸課題に真摯(しんし)に向き合い、国会で徹底的に議論を尽くす必要がある。国民がその行方を注視していることを忘れてはならない。