[軽石漂着] 国の幅広い支援必要だ
( 11/5 付 )

 小笠原諸島「福徳岡ノ場」の海底火山噴火で生じた大量の軽石が千キロ以上離れた沖縄県や鹿児島県の島々に漂着し、漁業や観光業などに被害が広がっている。
 各自治体などは、港や海岸を埋め尽くす軽石の撤去に懸命だが、時間がかかり、費用の負担は大きい。
 国土交通省は各地の港湾に漂着した軽石を撤去する自治体に対し、費用の一部を補助すると発表した。漂着範囲はさらに拡大する懸念もある。国は状況を把握し、迅速に幅広い支援に動くべきだ。
 福徳岡ノ場は8月中旬に噴火した。明治以降の国内噴火では最大級。噴出物は1億~5億立方メートルに達し、1914年の桜島の大正噴火に次ぐ量だったとみられる。
 軽石は西向きの海流や高波に乗り10月上旬に沖縄県の南北の大東島に漂着したと推測される。その後、沖縄本島や奄美群島に相次いで到達している。
 鹿児島県によると奄美群島全12市町村に漂着。1日現在、港湾20カ所、漁港14カ所、海岸52カ所で確認され、このうち12カ所で撤去などを終えた。
 漁船の吸水口に軽石が詰まる被害があったほか、一部の養殖いけすで軽石が混ざり、餌を与える前に取り除く作業が生じている。与論島ではタンカーが接岸できず、発電用重油の供給ができていないという。
 ダイビングの予約がキャンセルされるなどの影響も出た。新型コロナウイルスの感染が落ち着き、ようやく観光客が戻り始めた時期である。観光業への打撃も心配だ。
 県は、撤去には少なくとも1億800万円かかると試算する。国は撤去費用だけでなく、漁業や観光業への支援も検討してもらいたい。軽石が海を覆うことによる自然環境への影響調査にも取り組む必要があろう。
 海洋研究開発機構のチームが海流の動きを再現するモデルを使ってスーパーコンピューターでシミュレーションした予測では、軽石は黒潮に乗って北上し、11月下旬には関東地方沖に到達するという。すでに高知沖で確認されている。
 訓練中の海上保安部の巡視艇が軽石をエンジンの冷却装置に吸い込み、航行不能になった例もある。航行する船は十分に注意しなくてはならない。海保は海域での漂流の状況を周知してほしい。
 桜島の大正噴火では大量の軽石が鹿児島湾に浮き、逃げる住民の船の行く手を遮ったり、救助船が近づけなかったりした、という記録が残る。
 今後、桜島の大噴火があれば、周辺市町に降る火山灰や軽石の被害に加え、海を埋める軽石でフェリーなどが航行できない可能性もある。今回の漂着も教訓に、警戒と準備に努めたい。