[列車内の凶行] リスク減らす対策急務
( 11/10 付 )

 走行中の列車内での凶行が後を絶たない中、九州新幹線で男が液体をまき、ライターでレシートに火を付ける事件が起きた。車内の一部が燃え、一時騒然となったという。
 10月末に東京の京王線車内で男が乗客を刺し、ライターオイルをまいて放火したとされる事件があったばかりだ。今回、現住建造物等放火未遂容疑で逮捕された男は、京王線の事件を「まねしようと思った」と供述している。
 走行中の列車内は閉鎖空間で逃げ場がない。鉄道各社は乗客が危険にさらされるリスクを減らす対策を早急に検討し、犯行を防がなければならない。
 事件は広島発鹿児島中央行きの「さくら401号」が熊本駅を出発後間もなく発生した。火はすぐに消し止められ、けが人はなかった。新幹線は緊急停車した。
 列車内での事件は首都圏で相次ぎ、東海道新幹線では2015年に男がガソリンをかけて焼身自殺し、18年には乗客がなたで切りつけられ、いずれも多くの死傷者が出た。今年8月には小田急線で乗客が刃物で襲われた。
 乗客を無差別に狙った事件を防ぐため、鉄道各社は危機管理に力を入れている。JR九州は17~20年に新幹線の全車両に防犯カメラを設置した。京王線の事件を受けて社員による車内の見回りを増やし、駅構内の巡回も強化したばかりだった。
 その他の社も防護用の盾や防刃手袋を配備するなど対策を進めるが、決め手を欠くのは否めない。国土交通省は人工知能(AI)を含む最新技術を活用した不審者検知機能の高度化などの対策をまとめている。安全性が高まるよう取り組みを急ぎたい。
 だが、事件発生のリスクを完全にゼロにするのは容易ではない。航空機に搭乗する際に実施する手荷物検査を求める声がある一方、利便性が損なわれるとして慎重論も根強い。特に乗客の多い都市圏では現実的ではなかろう。
 とはいえ、人の命が奪われる惨事を繰り返してはなるまい。限られたスペースで複数の人を検査できる金属探知機などの開発も進んでいるとされる。国には助成によって新たなシステム開発を後押ししてもらいたい。
 交通政策の専門家は乗客にも注意を呼び掛ける。車内は絶対に安全な空間ではないことを念頭に置き、非常用の通報ボタンがどこにあるか、乗車時に確認するように促す。
 鉄道事業者も車内放送で非常ボタンの位置を知らせるなど乗客の協力が得やすい態勢を整える必要がある。犯罪の抑止にもつながるのではないか。
 鹿児島県内のバスや電車、船舶も防犯対策を一層強化したい。万一の事態が起きたとき、乗客に危険をどう知らせ、安全に誘導するのか。訓練を通じ不備はないか改めて確認すべきだ。