[コロナ禍と虐待] 「潜在化」防がなければ
( 11/13 付 )

 全国の児童相談所が2020年度に児童虐待として対応した件数が統計開始以来最多の20万5029件(速報値)に上ることが、厚生労働省のまとめでわかった。30年連続の最多更新だ。
 児相と連携を強める警察からの通告が増えたことや、国民の意識が高まり、積極的に通報する人が増加したことが要因だ。新型コロナウイルスの感染拡大により、家庭で過ごす時間が増えた影響にも注視したい。
 在宅時間の増加は学校などの目が届きにくくなり、虐待が「潜在化」するリスクもある。子どもの居場所づくりや児相の体制強化など、SOSを見逃さない対策が必要だ。
 厚労省によると、内訳は心理的虐待が最多で12万1325件。身体的虐待、ネグレクト(育児放棄)、性的虐待と続く。通告の経路は、警察からが10万3619件で半数に上る。
 気掛かりなのは、例年10~20%だった増え幅が5.8%にとどまったことだ。厚労省は「現時点で感染拡大との間に明確な関連性は見られない」とする。だが、幼稚園や学校からの通告がわずかに減っており、一斉休校などが影響した可能性もあるという。
 子どもたちを支援する側からは、コロナ下での対応に苦労する声も上がる。感染回避を理由に訪問や健康診断を拒む家庭があり、子どもの変化に気付く機会が減ってしまうためだ。
 15歳まで虐待を受けていた20代の女性は、友達が気付いたのがきっかけで通報してもらった。「コロナ禍で人との接触が減れば、そうした異変に気付いてもらえなくなる」と案じる。コロナの影響による親の経済苦境が子どもへの虐待につながる懸念もある。誰にも気付かれずに孤立感を深める子どもたちがいないか心配だ。
 心理的虐待には、子どもの前で家族に暴力を振るう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」も含まれる。
 内閣府の統計ではコロナ禍で在宅時間が増えた影響などから、DVの相談件数は20年度に約19万件(速報値)と、前年度比1.6倍に急増している。虐待の芽を摘むためにも、警察や児相、DVに対応する関係機関は情報を共有してもらいたい。
 鹿児島県によると、20年度の県内3児相と市町村の虐待認定件数は過去最多の2355件だった。
 県は19年8月の出水市の女児死亡事案などを踏まえて、虐待や不登校などに対応し、児相の補完的役割を担う「児童家庭支援センター」の整備に取り組んでいる。大隅、北薩地域に続いて今年7月には南薩地域(南さつま市)にも設置した。
 コロナ下にあっても、子どもや保護者にとって身近な相談場所になってほしい。児相と協力し、迅速で継続的な支援が行われることを期待する。