[石油備蓄放出] 市場安定へ協議継続を
( 11/25 付 )

 岸田文雄首相は原油価格の高騰を抑えるため、米国と協調して国家備蓄の一部を放出すると表明した。価格抑制を目的とした放出は初めてとなる。
 産油国への増産要請の効果が上がらない中、国家備蓄の一部を売却し、流通量を一時的に増やす。ただ、供給の多くを産油国に依存する構図は変わらず、政府内にも短期的効果しか期待できないとの見方がある。
 産油国が反発し生産量を絞れば原油価格は逆に上昇し、世界経済への悪影響は避けられまい。政府は他の主要消費国とともに、産油国との市場安定に向けた協議を粘り強く続けるべきだ。
 原油価格の高騰は、新型コロナウイルスの感染拡大で停滞していた経済活動が再開し、需要が拡大したことに伴う。産油国側は感染が再拡大すれば余剰が生じることを懸念。原油の値下がりは政府歳入や国内景気に打撃を与える恐れがあるため追加増産を見送っているもようだ。
 備蓄放出を主導した米国は、原油高騰で物価が大きく上昇している。自動車社会のため、中でもガソリン価格急騰の影響は深刻だ。バイデン政権は自国備蓄分の一部放出を決め、主要消費国に放出の検討を要請した。日本のほか、中国、英国といった主要消費国が足並みをそろえて応じる見通しだ。
 日本の国家備蓄は9月末時点で国内消費量の145日分ある。民間備蓄などを含めると計242日分を貯蔵している。国家備蓄は輸入量の90日分程度という目標量があり、これを上回る余剰分の一部を取り崩す。
 日本はこれまで中東の政情不安や災害時に民間備蓄を優先して放出してきた。石油備蓄法では、放出は災害や海外の政情不安など供給不足の恐れがある時に限定しており、値下げを狙って国家備蓄に手を付けるのは前例がない。今後の災害時などに対処できない事態が生じないよう、放出に当たっては厳格な対応が求められる。
 原油高は、日本でもガソリン価格が急騰するなど燃料や原材料のコスト上昇をもたらしている。企業や農漁業者の経営は圧迫され、回復途上にある景気への影響が懸念されている。
 こうした中、政府は先週閣議決定した経済対策に、ガソリン価格の高騰を抑制するため元売り業者や輸入業者に資金を支援する補助金を盛り込んだ。しかし、店頭価格は小売店が決めるため下がる保証はなく、生煮えの感は否めない。実効性のある支援を急ぐ必要があろう。
 産油国側が追加増産に否定的な背景には「脱炭素」の国際的な潮流もあるとされる。原油高騰を一過性の問題と捉えて対応するのではなく、化石燃料である石油への依存からの脱却を急ぎ、再生可能エネルギーへの移行をさらに推進する契機とすべきである。