[ラムサール条約] 出水ツル分散どう道筋
( 11/26 付 )

 出水市の干拓地一帯が、国際的に重要な湿地を保全するラムサール条約に「出水ツルの越冬地」として登録された。国内で53カ所目、県内では藺牟田池(薩摩川内市)、永田浜(屋久島町)に次いで3カ所目になる。
 干拓地は例年1万羽を超えるツルが飛来する国内最大の渡来地である。国際的に高く評価されたのは、地域住民らが60年間にわたり、保護活動や環境保全を担ってきた成果だろう。
 ただ、ツルの過密化解消という大きな課題を背負っている。国や地元自治体だけでなく、他の自治体や関係団体の協力を得ながら分散化に道筋を付けなければならない。
 登録されたのは出水平野の荒崎や東干拓など計478ヘクタールで、毎年冬場には3万7000羽を超えるツル類やカモ類が渡来する。特に、絶滅が危惧されるナベヅルは世界の総個体数の約9割、マナヅルは約5割が越冬する。
 出水市は条約登録を観光客の誘致や農畜産物のブランド化など産業振興の追い風にしたい考えだ。しかし、鳥インフルエンザウイルスを保有するとされるカモ類の飛来も多いだけにツルへの感染が懸念される。
 ツルの飛来は1960年代半ばに1000羽を超えてから増加傾向が続く。97年以降は毎年1万羽以上確認され、昨年は観測史上最多の1万7315羽が飛来した。こうした過密化は感染が一気に広がり、大量死につながるリスクがある。
 今季は出水市の養鶏場やツルのねぐらの水から高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出され、東干拓で回収されたナベヅルの死骸からも検出された。防疫を徹底するとともに、過密化の解消を急がなければならない。
 環境省は2002年、分散化に乗り出し、山口県周南市など他県の自治体と連携、渡来地づくりや出水からの移送などに取り組む。各自治体はねぐらや給餌場所の整備、上空のツルを誘うデコイ(実物大の模型)を設置している。幼鳥時に保護されたナベヅル4羽が今季も周南市へ移送された。
 だが、思うような成果は上がっていないのが実情だ。このため環境省は例年実施している給餌を昨季から約5年間かけて半分に減らし、一極集中を抑えようとしている。
 同省は19年度に小麦を中心に33トンを給餌し、シーズンごとに1割ずつ削減していく。ただ、給餌は元々農業被害を軽減するために始められただけに、被害状況を慎重に確認しながら削減を進める必要がある。
 条約は湿地から得られる恵みを持続的に活用する「賢明な利用」も求めている。条約登録を地域の活性化にどう役立てていくのか。防疫体制の充実はもとより、湿地の賢明な活用策を模索していかなければならない。