[日大理事長逮捕] 自浄力向上が不可欠だ
( 12/2 付 )

 所得税約5300万円を脱税したとして、所得税法違反の疑いで日本大学理事長の田中英寿容疑者が東京地検特捜部に逮捕された。田中容疑者は容疑を否認しているが、理事長職を辞任する。
 トップ逮捕という異例の事態である。にもかかわらず、日大はホームページに「深くおわびする」「捜査に全面的に協力する」とのコメントを掲載しただけで記者会見を開いていない。
 日大には昨年度、全国で2番目に多い約90億円の私学助成金が交付されている。第三者委員会を設けるなど自ら調査し、事件の真相と背景を明らかにする責任がある。
 理事長側近の元理事ら2人が10、11月、日大医学部付属病院建て替え工事の設計監理業務と医療機器などの納入に絡み、日大に計4億2000万円を流出させたとして背任罪で起訴された。
 特捜部は田中容疑者の自宅を家宅捜索し、1億円を超える現金が見つかっている。この2人がそれぞれ田中容疑者に数千万円を渡したとの供述を基に立証できると判断、逮捕に踏み切ったとみられる。
 田中容疑者は2008年9月に日大理事長に就任、以後13年間にわたり大学運営に携わった。その間、金や利権に絡むうわさが度々流れ、国会でも問題視された。
 だが立件には至らず、むしろ理事や幹部の任免に絶大な権限を振るい続け「理事長に周りが意見を言えない環境」(大学職員OB)をつくり上げてきたようだ。こうしたワンマン体制が長期化したことで大学の自浄作用が働かなくなったことは想像に難くない。
 それは18年に起きたアメリカンフットボール部の悪質な反則問題への対応にも象徴される。日大の第三者委は約3カ月後に報告書をまとめ、大学による事後対応の遅れを指摘した。
 さらに、田中容疑者が公式な場に姿を見せず、「説明責任を果たしていない」と厳しく批判した。しかし今回の背任事件についても田中容疑者は会見を開かず、トップとしての責任には言及していない。
 大学の対応も鈍いままだ。背任事件では危機対策本部の設置などを発表したが、資金流出の被害届を特捜部に提出するよう主張したのは30人余りいる理事の中で1人だけだったという。
 日大は約6万6000人の学生を擁する国内最大規模の総合大学で卒業生は120万人を超える。学生からは「トップが責任を取らないと大学は良くならない」といった声が聞かれる。
 相次ぐ不祥事が教育機関としての信頼を大きく損ねたのは否めない。日大は説明責任を果たすとともに、経営体制を見直すなど思い切った改革を進め、自浄能力を高めていくことが不可欠である。