[「辺野古」不承認] 首相は対立より対話を
( 12/4 付 )

 沖縄県の玉城デニー知事は、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画を巡り、防衛省が申請した設計変更を不承認とした。
 申請は埋め立て予定海域の軟弱地盤改良に向けた手続きだったが、県は調査が不十分などと判断。政府は決定を不服として対抗措置を取るとみられ、法廷闘争に発展する可能性がある。
 背景には辺野古への移設に固執する政府と、「新基地建設」に反対する県の対立がある。このままでは市街地中心部にある普天間飛行場の危険性を除去するという本来の目的達成は遠のくばかりだ。
 地元の理解を得ずに強行する政府の態度は容認し難い。岸田文雄首相は県、米政府双方との対話を重ね、打開策を見いだすべきだ。
 日米両政府は1996年に普天間飛行場の返還に合意し、日本政府は99年に辺野古への移設を閣議決定した。2013年、当時の仲井真弘多知事が辺野古沿岸部の埋め立てを承認したが、後任の故翁長雄志知事が取り消し、県と国の法廷闘争が繰り返されてきた経緯がある。
 この間に予定海域で軟弱地盤が見つかった。工期は大幅に延びて事業完了まで少なくとも12年を要し、返還は日米合意時点の「22年度またはその後」から30年代以降にずれ込む見通しだ。総工費は計画額の2.7倍の9300億円に膨らむ。
 辺野古への移設については埋め立ての賛否を問う19年の県民投票で7割を超す人が反対した。県は「地域の理解と協力の下で工事は進められるべきだ」と政府の姿勢を批判、国と県で協議する場を要請し続けてきた。しかし、政権側は「辺野古移設が唯一の解決策」と工事を続け、岸田政権になってもその姿勢を変えようとしない。
 軟弱地盤の改良工事には、公有水面埋立法に基づき知事の設計変更の承認が必要となる。知事は不承認という自らの権限で移設計画を阻止する最後のカードを切った格好だ。
 これに対し、政府は行政不服審査制度を使い国土交通相に不承認を取り消すよう審査請求する手続きを検討する。だが、同じ政府内で申請し裁決を下す手法に理解は得られるだろうか。
 軟弱地盤を巡っては防衛省が埋め立て開始の3年前に、地質調査した業者から地盤に問題があるとの報告を受けながら公表せず、工事に踏み切った問題が判明した。こうした不誠実な姿勢が県側の不信感を増幅させていることを政府は重く受け止める必要がある。
 先月下旬には普天間飛行場を飛び立った米海兵隊の輸送機オスプレイから水筒が住宅敷地内に落下した。首相は危険性の除去に向けてまずは普天間飛行場の運用を停止し、早期に実現可能な代替策を打ち出す責務がある。