[五輪外交] 米中、関係悪化回避を
( 12/9 付 )

 バイデン米政権は、来年2月の北京冬季五輪・パラリンピックに政府代表を派遣しない「外交ボイコット」を決めた。新疆ウイグル自治区などでの人権侵害に抗議する狙いだ。
 中国の人権状況には日本や欧州など国際的にも反発が広がっている。対中関係が急速に悪化しているオーストラリアも追随することを明らかにした。
 選手団は参加するとはいえ、平和の祭典である五輪が対立の舞台となったことは残念だ。米中は対話を続けて関係悪化を回避すべきである。
 人権外交を重視する米国は、中国の少数民族ウイグル族に対する人権侵害をジェノサイド(民族大量虐殺)と批判する。
 人権を巡っては、中国の元副首相に性的関係を強要されたと告白した女子テニス選手、彭帥さんの安全も懸念されている。
 ただ、中国の姿勢を改めさせる有効策は限られているのが実情だ。外交ボイコットは人権問題で中国に圧力をかける数少ないカードと言え、政治的なメッセージの性格が強い。
 中国政府は両国の決定に反発している。だが、人権問題に真摯(しんし)に向き合わなければ、国際社会から認められる国にはなれないことを自覚すべきだ。
 五輪は政治的中立を掲げながら、政治に翻弄(ほんろう)されてきた。
 1980年モスクワ五輪では、米国や日本など西側諸国が選手団も含めボイコット。84年ロサンゼルス五輪は旧ソ連や東欧が対抗してボイコットした。2014年ソチ冬季五輪は、同性愛宣伝禁止法を成立させたロシアへの反発から一部欧米諸国の首脳が欠席した。
 だが、いずれの五輪でも、開催国の問題のある政策が抜本的に是正されることはなかった。今回も、むしろ米中の関係悪化が懸念されよう。
 国際オリンピック委員会(IOC)は「政治判断は尊重する」と理解を示す。五輪の主役である選手に影響が及ばないようにしてもらいたい。
 注目されるのは日本政府の対応だ。来年は中国との国交正常化50年に当たる。最大の貿易相手国であり、関係改善を進める好機だ。一方、米中関係の緊張が高まれば、台湾情勢など日本の安全保障にも関わってくる可能性がある。
 政府は人権など価値観を共有する国々との連携、中国との歴史や経済関係、何よりも五輪の理念を考慮しつつ、主体的に判断すべきである。