
[熱海土石流] 行政は連携不足猛省を
( 5/20 付 )
昨年7月に静岡県熱海市で起きた大規模土石流に関する県の第三者委員会が最終報告書を公表した。崩落起点の土地で盛り土造成に関わったとされる現旧所有者に対する県と市の対応を「失敗」と結論付けた。
土石流で盛り土を含む大量の土砂が流れ落ち、災害関連死を含む計27人が死亡、1人が行方不明となった。報告書は被害拡大の責任の一端が行政にあることを認めた厳しい内容といえる。
県と市双方の当事者意識の欠如が野放図な造成を招いたと言われても仕方があるまい。報告書を重く受け止め、連携不足を猛省するべきだ。
第三者委は昨年12月に設置され、行政対応の妥当性を検証してきた。
報告書では、2007年に旧所有者が出した未記載部分などがある盛り土の届け出を市が受理した点や、盛り土が崩落した場合の「最悪の事態」を県と市が想定せず、足並みがそろわないまま不適切な開発行為を許した点を批判した。
11年には不適切な盛り土を問題視した市が、県土採取等規制条例に基づく是正措置命令を検討しながら発令を見送っている。報告書は「県は市に理由を確認するなど積極的に関与すべきだった」と指摘した。
浮かび上がるのは、県と市が互いに責任をなすり合う構図である。
県土採取等規制条例に基づく開発行為の通常の届け出先は県だ。しかし、面積が1ヘクタール未満の場合は市となり、措置命令も出す。県と市は旧所有者の不動産管理会社が出した図面の信ぴょう性を巡って所管を押し付け合い、どちらが面積を確定させるか決まらないまま、会社は土地を手放した。
両者が問題意識を共有し、対策を取っていれば、これほどの崩落には至らなかったのではないか。遺族から「行政の不作為で多くの人命が失われた」との声が上がるのは当然である。
熱海市議会の調査特別委員会(百条委員会)はこれまでに、県市双方の元担当者や土地の現旧所有者らの証人喚問を行った。だが、ここでもすべての出席者が自らの責任を否定している。
遺族らは昨年、現旧所有者らに損害賠償を求めて提訴した。裁判を通じて造成の経緯や行政の関わりが明らかになるか、注目されよう。
政府が、土石流被害を受けて全国を対象に行った盛り土総点検では、1089カ所の不備が確認され、このうち516カ所で必要な災害防止措置が確認できなかった。
現行法では、土地の用途によっては規制対象とならないケースもあるため、政府は盛り土全般を規制し、無許可造成や是正命令違反への罰則を強化する法案を国会に提出している。同様の被害を二度と出さないため、実効性ある再発防止策につなげてもらいたい。
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