[新茶の季節] 一服の習慣を産地から
( 5/21 付 )

 みずみずしく柔らかい新芽を蒸して作るお茶は、香りも味も格別だ。そんな新茶が出回る季節になった。
 鹿児島県は「日本一早い産地」として知られる。本年産新茶の取引は今月半ばにピークを過ぎ、JA県経済連によると、県茶市場の1キロ当たり平均単価は昨年を100円程度上回っている。特に早場地帯が天候に恵まれ、良質な一番茶になったことを反映した。
 とは言え、茶をめぐる情勢は楽観できない。急須で入れる緑茶(リーフ茶)の需要減で価格は低迷している。栽培面積、仕上げ茶の原料となる荒茶の生産量ともに、静岡県に次ぐ全国2位の鹿児島県が現状に甘んじているわけにはいかない。主産地として販路を広げ消費拡大につなげる策を練りたい。
 欧米を中心とする輸出は有望だ。2021年の緑茶輸出額は204億円と過去最高、ここ10年で5倍に増えた。
 鹿児島県は17年度2億7000万円だった県産茶輸出額を25年度20億円にする目標を掲げ、流通システムづくりに乗り出している。JA県経済連の担当者は「ヨーロッパは有機、米国からは抹茶が求められる。輸出先に見合う産地づくりを加速させたい」と意気込む。
 県産茶輸出額は20年度、7億6000万円に伸びたが、5年後の目標到達にはまだ遠い。販路拡大や、栽培から加工、販売まで一層の協力が必要だ。
 国内向けも工夫次第で伸びしろはある。
 農林水産省が、新型コロナウイルスの拡大前後を比べた「緑茶の飲用に関する調査」では、14%の人がリーフ茶を飲む頻度が増えたと回答した。特に若い世代の割合が高かったことは、売り込む側にとっても期待が持てる。
 茶どころの一つ霧島市には、料理に合わせブレンドする茶をワイングラスで出すイタリアンレストランがある。鹿児島市の複合施設「センテラス天文館」には、地元茶商が日本茶ギフトショップを出店した。おしゃれな包装デザインが目を引く。需要開拓に向け、あらゆる業種で知恵を絞ってほしい。
 一方で、並び立つ産地の静岡に比べ、鹿児島の消費は必ずしも多くない。
 総務省の家計調査によると、19~21年の1世帯当たり平均の年間緑茶購入金額と数量は、鹿児島市がそれぞれ全国2位の6269円と、同5位の1155グラム。静岡市はいずれもトップ8924円、2007グラムである。
 茶に含まれるカテキン類の抗ウイルス作用や、テアニンのリラックス効果など健康機能性が注目されている。農水省は今年、新茶シーズンの本格化に合わせ「日常に、もっと日本茶を!」と呼び掛ける「毎日お茶のある暮らしキャンペーン」を新たに始め、茶の楽しみ方などを発信する。
 まずは地元から。「かごしま茶」で一服する習慣を広げていこう。