[新電力撤退] 国は経営実態の把握を
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 電力小売り事業に参入した新電力会社の撤退や経営破綻が相次いでいる。
 新電力は、2016年の電力小売りの完全自由化で参入が進んだ。割安な料金プランや独自のサービスで契約者を増やしてきたが、電力調達コストが高騰、経営環境が急激に悪化した。
 国民生活や企業活動に電力の安定供給は欠かせない。国は新電力の経営実態の把握に努め、対策を講じるべきである。
 帝国データバンクによると、2021年度に倒産や事業撤退などに至った新電力は約700社のうち31社に上った。ホープエナジー(福岡市)は全国の自治体や公共施設など約5000カ所に電力を供給していたが、破産した。
 鹿児島県内最大手のナンワエナジー(鹿児島市)は今年4月末、ビルや工場などに向けた電力提供を停止。6月末には家庭向けも終了する。
 昨年以来、新型コロナウイルス禍からの経済回復に伴って原油や液化天然ガス(LNG)が不足。ロシアによるウクライナ侵攻も影響して、世界的な資源価格の高騰が続く。
 新電力の多くは自前の発電施設を持たず、卸電力市場で調達している。調達コストの上昇分を小売価格に転嫁せざるを得ないが、大手に比べ割安な料金を売りにしていれば、事業継続が難しくなるのは当然のことだろう。
 企業や家庭が契約している新電力が事業を停止しても、一定期間は各地域の大手電力が供給する仕組みになっている。とはいえ、電力会社の切り替えがスムーズに進んでいないケースも少なくない。特に企業は深刻だ。燃料高による採算悪化を背景に切り替えを制限する電力小売業者が増えている。
 このため、新たな契約先が見つからない場合に大手電力の送配電会社が電気を供給する「最終保障供給制度」の利用が増加。経済産業省によると5月20日時点で1万3000件超に上っている。前年同月の28倍に当たる。
 料金は大手電力が提供する標準的価格の2割増しで、暫定措置と位置づけられている。だが、大手電力の通常料金が値上がりしているため、この制度の方が割安となる逆転現象が生じた。
 安全網とされる制度の利用が長期化する懸念や電力の価格競争を阻害するとの指摘もあり、政府は、この料金に卸市場価格を反映できるよう見直す。
 しかし、ウクライナ情勢などを考えると卸市場の価格は高止まりするとみられ、経営に行き詰まる新電力が今後も増える恐れがある。混乱を招かないために新電力への支援も必要だろう。
 政府は輸入燃料に過度に依存しないよう再生可能エネルギーを活用する体制の構築を急ぎ、電力小売り事業の安定化へ抜本的対策に取り組まなければならない。消費者も、日常から節電に努める必要がある。