[核禁止条約会議] 際立つ日本政府の不在
( 6/28 付 )

 核兵器の開発から保有、使用までを史上初めて禁じた核兵器禁止条約の締約国会議は、「核なき世界」へ即時の行動を求める宣言を採択し閉幕した。
 ロシアのウクライナ侵攻が続く中、核廃絶への共感は、北大西洋条約機構(NATO)の一部加盟国にも広がった。世界の被爆者の声を聴き、賛意を示したのは前進と言える。
 ただ、米国や中国などの核保有国は入っておらず、唯一の戦争被爆国の日本も参加しなかったのは容認し難い。核廃絶へ世界を先導すべき日本の役割が問われる。
 採択された宣言は「核抑止論は誤りだ」とし、核保有国だけでなく「核の傘」の下にいる日本など同盟国も核への依存を減らす真剣な取り組みを行っていない、と批判。「核兵器の使用や核による脅しは国際法違反だ」と強調した。
 核の非人道性を長年訴えてきた被爆者にも言及し「貢献を称賛する」とたたえ、今後も協力していくとした。
 だが、「核なき世界」への道は、依然として険しい。米英仏中ロの核保有五大国、事実上核を保有するインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮のいずれも加わる見通しはない。
 核抑止を安全保障の中軸に据える国々の抵抗は根強い。米国の「核の傘」の下にある日本でも、ウクライナ情勢を受けて核兵器を共同運用する「核共有」の議論が出ている。
 日本は会議のオブザーバー出席さえも見送った。岸田文雄首相は「核兵器国は1カ国もまだ条約に参加していない。日本としては米国との信頼関係の下、現実的な核軍縮、不拡散の取り組みを進めるべきだ」と説明する。
 ただ、オブザーバーであっても日米同盟に支障を来すことはなかっただろう。同じように米国の核戦力に依存するNATO加盟のドイツなど4カ国や、オーストラリアはオブザーバー参加し、存在感を示したからである。
 一方、日本からは被爆者や若者らの団体が参加したのは救いだった。世界の若者らが集う「若者締約国会議」も同時に開かれ、核廃絶を願う若い世代の行動は尊い。
 各国が懸念しているのは、保有国も加わり核軍縮・不拡散の礎とされる核拡散防止条約(NPT)の形骸化である。核軍縮の交渉が進まない中、岸田首相も出席する8月のNPTの再検討会議に注目したい。
 長期化する核保有国と非保有国の対立を乗り越え、「核なき世界」への道筋を描けるのか正念場となる。日本は双方が分断しないよう懸け橋とならなければならない。
 来年は先進7カ国首脳会議(G7サミット)が広島市で開かれる。核廃絶へ向け日本は議長国として責任を果たすべきである。