[男女賃金差開示] 「不合理」是正の一歩に
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 女性活躍推進法に基づき、従業員が300人を超える企業に対し男女間の賃金差の開示を義務付ける改正省令が7月中にも施行予定だ。
 企業は上場・非上場を問わず、全労働者と正規、非正規の3区分それぞれの男女の年間平均賃金を算出。その上で、男性の水準に対する女性の比率を公表しなければならない。
 他の先進国に比べて大きい男女間の賃金格差を「見える化」し、企業に改善を促す。旧来の労働慣行を見直し、不合理さを正す一歩としたい。
 厚生労働省によると、2020年の所定内給与(月額平均)は男性33万8800円に対し、女性は25万1900円。74%の水準にとどまる。
 押し下げの要因はさまざまだ。結婚や出産・育児でキャリアが途絶えがちで、平均勤続年数が短いことや、非正規が多いことが挙げられる。さらに、報酬が比較的高い管理職に占める割合の少なさも関わるとみられる。
 対象となる300人超の企業は3月末現在で全国約1万7600社の見通し。鹿児島労働局によると、鹿児島県は180社が相当する。初回の開示は各企業の事業年度が終了後、おおむね3カ月以内の公表を求める。3月期決算企業が多いため、開示が本格化するのは23年度以降になりそうだ。
 参院選前に突然飛び出した印象が否めない政府の強化策ではある。作業負担の重さなど、企業の間から戸惑いや慎重意見も挙がる。とはいえ浸透していけば、女性活躍に力を入れる企業にとっては多様性を重んじる投資家や求職者へのアピール材料になるはずだ。
 反対に、賃金差が際立つ場合、その要因や今後の取り組みなど、是正に向けた経営者の姿勢を示してほしい。
 説明を追記したい企業には、追加的な情報公表も認める方針のようだ。例えば「女性の新卒採用を強化した結果、相対的に賃金水準の低い女性労働者が増え、前事業年度よりも男女格差が拡大した」などの事例が示されている。“外部の目”を意識した経営で、女性が働く環境整備を加速させたい。
 賃金格差の情報開示は、女性活躍推進の重点方針として政府がまとめた「女性版骨太の方針2022」の柱の一つ。目指すべき「経済的自立」には男性との賃金格差解消が重要として、他にも、非正規労働者の賃上げや、看護・介護・保育に携わる人々の収入を引き上げる対応方針が盛り込まれた。
 この骨太方針は冒頭で、従来の各種制度や労働慣行、固定的な性別役割分担意識など構造的な問題を指摘。人生100年時代を迎え、女性の人生と家族の姿は多様化しており、もはや「昭和の想定が通用しない」と断じた。
 賃金格差開示は一里塚にすぎない。女性活躍、男女共同参画社会をつくるための取り組みは待ったなしである。