[与党改選過半数] 平和な国どう築くのか
( 7/11 付 )

 参院選は自民、公明の与党が改選124議席の過半数を獲得した。衆院の解散・総選挙がなければ、今後3年間は国政選挙がない。国民は政治の安定を選択したと言える。
 注目したいのは自民と日本維新の会の伸長である。ウクライナ危機を受けて両党は防衛費の増額を訴えた。中国の台頭、北朝鮮の相次ぐミサイル発射で、国民の間に広がる不安を背景に支持を得たに違いない。
 さらに、両党を含めた改憲勢力4党が参院でも3分の2以上を維持することになった。
 一方、岸田政権の経済政策を批判した立憲民主党は伸び悩んだ。泉健太代表は政策提案型路線を唱えたものの、国民の支持は集まらなかった。戦略の再考が迫られよう。
 選挙戦終盤、奈良市で応援演説中だった安倍晋三元首相が銃撃され、亡くなった。銃規制の厳しい日本で起きた事件だけに衝撃は大きい。岸田政権は山積する課題に全力で取り組み、平和な国づくりを進めなければならない。

■目に見える成果を

 岸田文雄首相は参院選の公示前、矢継ぎ早に政策や方針を打ち出した。
 新型コロナウイルスを含む感染症対策では、首相直轄の「内閣感染症危機管理庁」や米疾病対策センター(CDC)をモデルにした専門家組織「日本版CDC」の創設を表明した。
 物価高や景気対策では「物価・賃金・生活総合対策本部」の初会合を開き、「継続的な賃上げを目指す」とした上で、節電ポイント制度の導入など経済対策をアピール。看板政策「新しい資本主義」では、中核に女性の経済的自立を位置付けると強調し、男女の賃金格差公開が企業に義務付けられる。
 コロナ対策や物価・景気対策、女性の経済的自立への取り組みなどは今後、目に見える成果を上げられるかどうかが問われる。アピールに終わらせず、国会で議論を重ね、着実に実行しなければならない。
 選挙期間中、異例の外遊にも踏み切った。先進7カ国首脳会議(G7サミット)に出席、来年5月は岸田首相の地元・広島で開催されることになった。首相は「核兵器の惨禍を人類が二度と起こさないとの誓いを世界に示す」と意欲を示した。だが、広島サミットを成功に導くには核保有国と非保有国の橋渡し役として「核なき世界」にどう道筋をつけるかが鍵を握る。
 北大西洋条約機構(NATO)首脳会議にも参加した。軍事力を強める中国をにらみ、ウクライナ危機で欧米との連携を深め、東アジアへの欧米の関与を確実にするのが狙いという。
 安全保障政策に国民の関心が高まる中、防衛力強化に向けて防衛費の大幅増額や、相手領域内のミサイル発射を阻止する「反撃能力」保有を巡る議論が活発化するだろう。
 ただ、最も大事なことは軍事的衝突をいかに避けるかに尽きる。「外交の岸田」の真価が問われる。
 新型コロナ感染が再び広がり、物価の上昇が続く。食料自給率の向上、地方創生、エネルギー政策といった長年の課題にも将来を見据え、本腰を入れて取り組んでもらいたい。

■独自性の発揮期待

 こうした国内外の諸課題を解決していく上で、参院の存在意義が試されることになる。中長期的な視点で物事を判断する「良識」が求められよう。
 新憲法の制定で連合国軍総司令部(GHQ)が提示した草案は一院制だったが、日本側の要請で二院制になった。当時の国会審議で、憲法担当の金森徳次郎国務相は二院制を妥当とする理由についてこう述べている。
 「参議院設置の理念は、衆議院に対する抑止的機能を前提として、知識経験ある慎重熟練の士を求めることにある」
 参院は衆院の行き過ぎをチェックする役割を担うため、豊かな知識と経験のある議員で構成されることが期待された。衆院の足りない部分を補足し、国民の意見を法案などに幅広く反映させることも参院の務めだ。
 改憲勢力が3分の2を維持し、今後動きが加速していくだろう。選挙戦で議論が深まったとは言い難く、改憲の必要性など国民の理解が欠かせない。与党が数の力で押し切るのは言語道断だ。国民の安心・安全な暮らしの確保へ党派を超えて取り組んでこそ、参院の独自性を発揮できる。
 民主主義の根幹である選挙期間中、安倍氏を銃撃した容疑者の行為は、どんな理由があったとしても決して許されない。要人の警備・警護の在り方を検証するとともに、事件が起きた社会的な背景にもしっかり向き合うべきである。卑劣な犯行が繰り返されてはならない。