[東電株主訴訟] 安全軽視を厳しく批判
( 7/15 付 )

 東京電力福島第1原発事故を巡る株主代表訴訟で東京地裁は、津波対策を怠り会社に損害を与えたとして、旧経営陣4人に計13兆3210億円の支払いを命じた。旧経営陣個人の責任を認める司法判断は初めてだ。
 原発の敷地を超える津波の襲来は予見可能で、旧経営陣が対策を取っていれば重大事故を避けられた可能性が十分あったと指摘。事故前の対応を「安全意識や責任感が根本的に欠如していた」と厳しく批判した。
 原発事故による被害の大きさを重く見て、事業者には「万が一にも防止すべき社会的、公益的義務がある」と強調。旧経営陣の責任を明確にした意義は大きい。原発事業者全体への警鐘として、判決を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
 裁判は、津波を予測できたかどうかが焦点になった。
 事故発生前の2002年、政府の地震調査研究推進本部が地震予測「長期評価」を公表。東電子会社は08年、これに基づいて福島第1原発に最大15.7メートルの津波が到達すると試算した。
 判決は、長期評価には相応の科学的信頼性が認められ、過酷事故が起きるような津波は予見できたとした。原発の主要建屋や重要機器室の浸水対策工事をしていれば、重大事故を避けられた可能性があったと結論づけている。
 その上で、長期評価の信頼性は不明として土木学会に検討を委託したまま放置した旧経営陣の対応を「著しく不合理で許せない」と非難した。専門家の意見を軽視し、主体的に安全対策を検討しなかった東電は猛省が必要だ。
 今回、信頼性を認めた「長期評価」は、これまでの裁判では判断が分かれている。
 旧経営陣3人が業務上過失致死傷罪で強制起訴された刑事裁判で東京地裁は「客観的な信頼性は認められない」と否定。最高裁は今年6月、長期評価の信頼性や津波予見性の有無は判断せずに、「津波は想定を超える規模で、国が東電に防潮堤を事前に設置させたとしても事故は回避できなかった」として国の賠償責任を認めなかった。
 今後も続く原発訴訟で、どのような見解が示されるか、注目したい。
 今回の判決では、東電が津波の試算などに関する情報を旧原子力安全・保安院に明らかにしなかった企業風土も問題視した。現状維持を優先し、「有識者の意見の都合の悪い部分を顕在化しないように腐心した」と手厳しい。
 事故を教訓に規制は強化され、政府は安全が確認された原発を最大限活用する方針だ。だが、原子力規制委員会は「基準適合イコール事故ゼロではない」とくぎを刺している。
 規制委の新規制基準も安全対策の最低限にすぎない。原発事業者には、事故を起こさないための不断の努力が求められる。