[御嶽山噴火判決] 防災対策強化の教訓に
( 7/22 付 )

 御嶽山(長野・岐阜県境)噴火を巡り、犠牲者遺族らが国などに損害賠償を求めた訴訟の判決は、請求を退けた一方で、噴火警戒レベルを最も低い1のまま変更しなかった当時の気象庁判断を「違法」と断じた。
 審理した長野地裁松本支部は「漫然と据え置いた」と非難。人命に関わる防災情報の重要性を改めて強調した。
 鹿児島、宮崎両県では桜島、諏訪之瀬島、口永良部島、薩摩硫黄島、霧島山(えびの高原・硫黄山、大幡池、新燃岳、御鉢)の8火山で噴火警戒レベルを導入。自治体による立ち入り規制や注意喚起の指針になっている。運用は適切か。足元の防災対策は十分か。判決を教訓にしたい。
 噴火は2014年9月27日に発生し死者58人、行方不明者5人を出した。
 当日の警戒レベルは最も低い1(当時の表現で「平常」)だった。2週間以上前の10、11日に、2(火口周辺規制)への引き上げ基準を超える火山性地震の発生数が観測されたが、判決はこの指標だけで「直ちに上げる注意義務があったとはいえない」とした。
 だが、こうした活動状況があり、噴火2日前の25日には山体膨張の可能性が気象庁内で指摘されていたにもかかわらず、十分な検討をせずに「漫然と」据え置いたことを問題視。「著しく合理性に欠けて違法だ」と認定した。
 とはいえ、レベル引き上げには一定の時間を要する。仮に規制したとしても、被害者らの立ち入りに間に合わなかった可能性を指摘。「気象庁の違法行為と損害との間に相当因果関係があるとはいえない」と結論づけた。
 原告らは、国を免責した判断に納得できないとしながらも、違法性を認めたことは評価する。
 少しでも噴火の予兆が見られれば警戒を強め、データを基に十分な検討を重ねる必要性を指摘した点は、今後の取り組みに生かすべきだろう。
 御嶽山噴火以降、火山防災対策は改善が進んだ。登山者らに火山活動急変の可能性を意識してもらおうと、警戒レベル1の表現は「平常」から「活火山であることに留意」に改められた。
 改正活火山法が施行され、全国49火山の周辺自治体は不特定多数の人が集まる場所を「避難促進施設」に指定。それぞれの管理者は「避難計画」策定が義務となった。計画には警戒レベルが上がった場合の避難ルートや、情報伝達方法などを盛り込む必要がある。
 鹿児島県内で該当する6市町村は計78施設を指定したが、県によると、21年度末時点で、うち7施設が避難計画を未作成だ。自治体の協力を得ながら、あらゆる可能性に備える防災対策を急がなければならない。
 活火山の噴火予知がまだ極めて難しい中で、個々の命を守るため噴火災害の記憶を風化させないことが重要だ。