[クロマグロ規制] 漁業者の実情に配慮を
( 7/23 付 )

 鹿児島県は太平洋クロマグロのうち大型魚(30キロ以上)の漁獲について、定置網漁、漁船漁業ともに本年度末まで停止するよう命じた。国から割り当てられた年間の漁獲枠の上限に達したためだ。
 水産資源の持続的な活用に向けて、規制が必要なことは理解できる。だが、定置網に掛かったクロマグロも放流しなければならないことに、県内の漁業者から困惑の声が上がっている。
 クロマグロは定置網を揚げた時点でほとんど死んでしまうが、それを海に放つのが現実的なのか。政府は、漁業者が納得できる規制の在り方を探る必要がある。
 定置網は「待って取る」漁法で、特定の魚種を狙うのは難しく、クロマグロも意図せず網に掛かってしまうことがある。
 漁獲量を規制するのは水産資源保護のためである。にもかかわらず、生きたまま放流できない状況は資源を無駄にしていると言わざるを得ない。また燃油価格の高騰に悩む漁業者にとって、出荷すれば高額の収入を得られるクロマグロを捨てることは断腸の思いだろう。
 クロマグロは、すしのネタや刺し身に使われ、日本が最大の消費国である。しかし、太平洋の親魚の資源量は、ピークだった1961年の約15万6000トンから2010年には約1万1000トンに減った。14年には国際自然保護連合(IUCN)が、日本の乱獲が一因だとして絶滅危惧種に指定した。
 このため、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)が規制強化に乗り出し、15年から国・地域ごとの漁獲枠が設定された。日本は18年から、大型魚と小型魚(30キロ未満)でそれぞれ漁法別や都道府県別に漁獲枠を割り当てた。上限を守らない場合は罰則もある。
 こうした取り組みもあって、太平洋クロマグロの親魚の資源量は、18年に約2万8000トンまで回復し、IUCNは21年9月に絶滅危惧種のリストから外した。また、22年の大型魚の漁獲枠は前年比で15%引き上げられている。
 一般の釣り人にも対しても、今年6月から漁獲量の上限が設けられた。厳しい管理下にある漁業者の不満がたまっていることを考慮した。日本としては、数量を厳格に管理していることを国際社会にアピールする狙いもある。
 とはいえ、ピーク時を考えると資源回復はまだ十分とは言えまい。水産資源の確保は国際的な課題で、各国は歩みを止めてはならない。特に日本は、クロマグロの大量消費国として責任ある行動が問われる。
 政府は水産資源の動向について正確なデータを把握した上で、保護と活用策を各国に示す必要がある。また、漁業者の実情に応じた規制や補償についても議論を深めたい。