[五輪汚職疑惑] 資金提供の「闇」解明を
( 7/28 付 )

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の高橋治之・元理事の会社が、大会スポンサーに選ばれた紳士服大手AOKIホールディングスから約4500万円を受領していた問題で、東京地検特捜部が強制捜査に踏み切った。容疑は受託収賄とされる。
 組織委の理事は、公務員に準ずる「みなし公務員」に当たる。高橋氏が理事の立場を利用し、AOKIの五輪事業参入を巡って働きかけがあったのかが焦点だ。
 昨夏の開催から1年。さまざまな不祥事に揺れた東京大会に、さらに汚職疑惑という暗部が加わった。特捜部は徹底的に「闇」を解明してほしい。
 高橋氏は広告大手・電通の元専務でコンサルタント会社「コモンズ」の代表を務める。商業五輪の先駆けとなった1984年ロサンゼルス大会から五輪に関わっていた。
 スポーツビジネスの世界で実績のある高橋氏が、その人脈や知識を不正に活用していたとすれば残念だ。
 「コモンズ」とAOKIは2017年9月、月額100万円のコンサルタント契約を結んだ。18年10月、AOKIは大会スポンサーに選定され、19年夏から五輪エンブレム付きのスーツなどを販売。3万着以上を売り上げた。
 特捜部は、このコンサル料に、スポンサー選定に伴う商品販売などを期待する賄賂性があったとみる。AOKIの前会長は「高橋さんの人としての力に期待した」と供述。高橋氏は不正を否定している。
 AOKI側が「コモンズ」に支払っていたコンサル料は、五輪事業参入後、月50万円になったという。参入後はなぜ減ったのか。その経緯も明らかにしなくてはならない。
 今回の東京大会はスポンサーを募る専任代理店となった電通の力もあり、組織委の公式報告書によると、最終的に68社から約3750億円の協賛金を集めた。五輪史上最高額とされる。
 だが電通と組織委によるスポンサー募集、決定の過程はブラックボックスとなっている。古巣に影響力を持つ高橋氏が、AOKIの選定に「口利き」したのではと疑いの目が向く一因だ。
 東京大会では、電通出身の当時の組織委職員が主導した旧エンブレムの選考でも、「不透明」「密室」と批判を浴びた。
 また招致委員会が海外のコンサルタント会社に2億円以上を不正に支払った疑惑も、解明されていない。高橋氏は招致のロビー活動にも深く関わり、「コモンズ」には招致委から9億円超が送金されていた。
 正当な手続きと情報開示の仕組みがないことが不正を生むとも指摘される。「五輪汚職」が摘発されれば五輪史の汚点だが、商業化に歯止めをかける改革に着手する契機ともなるはずだ。