[最賃大幅上げ] 中小支援が不可欠だ
( 8/3 付 )

 中央最低賃金審議会(厚生労働相の諮問機関)は2022年度の最低賃金(最賃)を全国平均で31円引き上げ、時給961円とする目安額を決定した。
 ロシアのウクライナ侵攻や円安に伴う急激な物価高を重視し、引き上げ幅が過去最大となったことは評価できよう。
 ただ、企業には人件費の増加が重くのしかかる。特に、経営体力の乏しい中小企業は深刻だ。政府は事業が確実に継続できるよう、あらゆる支援を講じるべきである。
 最賃はパートなど非正規労働者を含む全ての労働者に適用される賃金の下限額で、下回った企業には罰金が科される。今回の目安額を参考に都道府県ごとの地方審議会が新しい額を決め、10月ごろに適用される。
 資源高などを背景に物価が急上昇、6月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率は、前年同月比2.2%と5月の2.1%を上回り、3カ月連続で2%を超えた。
 民間調査機関の調べでは、8月以降も1万品目以上の食品や飲料品が年内に値上げされる見通しで、家計は一段と圧迫される。暮らしの安定には物価上昇に見合う賃上げが欠かせない。
 大幅な引き上げで決着したのは、経営者側もこうした現状を考慮した結果と言える。ただ、物価高に加え、新型コロナの感染再拡大などで厳しい経営を強いられている企業は賃上げに踏み切れないのが実情だろう。
 中小の経営が厳しさを増す要因の一つに、原材料費などの上昇分を製品やサービスの価格に転嫁できていないことがある。
 中小企業庁は中小の下請け企業がエネルギー価格や原材料費などコスト上昇分を価格転嫁できているかどうかのアンケートを5〜6月に実施、2割が価格に転嫁できず、一部の転嫁にとどまっている企業も多かった。
 政府は昨年12月、適切な価格転嫁を促す施策を取りまとめた。今年4月に決定した物価高騰対策でも、弱い立場にある中小企業が大企業との間で適正に取引できる環境を整えるとした。中小が賃上げの原資を確保できるよう、こうした対策を着実に実施していく必要がある。
 鹿児島県の引き上げ額の目安は30円となった。ただ、現在の時給は821円で、最も高い東京都とは200円以上の開きがある。労働力の都市部への流出を防ぐために、岸田政権には地域格差の縮小も重要な政策課題として取り組んでもらいたい。